三月のクローバーコレクト 2【声優】【学園モノ】

それぞれの役割 ページ21

ふと、前にいる彼らを見る。



増田俊樹は、ムードメーカーで、まわりをよく見ている人間だ。
その場に応じた行動、対応、言葉選びに、態度。上手く立ち回り、みんなが気持ちよくいられるように空気を作ってくれる。誰よりも優しくて、まわりを気にして、わざと汚れ役を引き受けてくれたりする。



入野自由は、コーディネーターで、場を弁えられる人間だ。
笑っていいとき、笑わなきゃいけないとき、笑うことでその場を安全に保たせるとき。いつもニコニコ笑ってるけど、自分の意見はしっかり伝えてて、自分の意思は曲げたりしない。



江口拓也は、チェッカーで、自分を主観的に捉えられる人間だ。
自分がこの空間のどの位置にいるのか、他人にどう見られているのか、そういうのが分かっている。
あえて分からない素振りをしたり、分かっているからこそ反対の行動をとったり、とにかく天邪鬼なやつだ。




………だとしたら、私はどんな役割を果たしているんだろう。アイデアメーカー？サポーター？アウトサイダー？それとももしかしてリーダー？

みんな、腹に抱えているものがなんなのかは、私は知らない。彼らだって、私の腹の中なんか知らないだろうし、知りたくもきっとない。

分からない。分からないからこういうのはやめたっていうのに、また性懲りもなく始めたりして何がしたいんだろう。




今は楽しいけれど、家に帰ってベッドに寝転がったら、きっとどうしようもない気持ちになるんだろう。

『また捨てられるぞ！』と、小さな悪魔に囁かれるに違いない。『傷つく前にやめたら？』って、小さな天使が言い出すのかもしれない。




江「A、どうした？」

「え、あ、いや考え事。………なん、でも……」

江「ほんとにどうしたよ。なんであっちばっかり見て、あっちになにか……」



？「あれ、Aちゃん？」




頭の中で『ビッー！ビッー！』と、サイレンがけたたましくなってる。




？「やっぱり！Aちゃんだよね！久しぶりだなぁ〜」




赤信号。体全体から警告が出てる。




？「元気してた？もう何年も会ってなかったけど、ずいぶん背が伸びたんだね！ますます綺麗になったよ〜」




なのに、進むことも戻ることも出来ない。身体が、動かない。かろうじて動かせたのは戦慄く口だけだった。震える喉を無理やり開ける。





「ゆうき、くん……」

嫌になるくらい→←白と透明

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す