作り笑いが2 ページ4
Aside
数日して政府の方から連絡があった。
私の本丸の譲渡についてだった。新たな審神者を立てることになるが、刀剣男士とのトラブルを恐れた政府が見習いを私の本丸に送り込み、その見習いを新たな審神者としたいらしい。
お古の本丸をもらって嬉しい奴がいるのかは謎だけど。
「女の子だったらいいな、」
口からそう漏れた。本心から言うことなんてほとんどないから少し恥ずかしかった。
「主、皆大広間に集まったよ」
障子の向こうで声が聞こえた。その声にビクッと身体が驚いた。
「はい、今行きます」
手紙を元の所に置いて障子を開く。そこには本日の近侍である歌仙兼定がいた。
美しい顔立ちである歌仙兼定と出来るだけ目を合わせるようにまた作り笑いをした。
「お待たせしました」
歌仙「そこまで待っていないよ、さぁ行こう」
率先と前を歩いてくれる歌仙兼定には正直感謝している。誰かの前を歩くのに慣れていないのと表情筋を休めるためにいつもの無表情になるからだ。
歌仙「それにしても主から集まるように言うなんて珍しいね」
「この本丸にとって大事なことなんです、皆様にはお伝えしたくて」
咄嗟に作り笑いをして質問の受け答えをする。
歌仙「では夕餉も一緒に食べないかい?」
「せっかくお誘い頂いて有難いのですがまだ仕事が残っているので、すみません」
審神者の任について早3年。何度もこの会話をしては断っている。なのに、彼はよく3年間もの間私を誘ってくる。
やめて欲しい、なけなしの良心が痛い。
歌仙「それは残念だ」
歌仙兼定は眉毛を少し下げて言うから私が悪者見たく見えてしまう。
彼は私をどうしたいのだろう。
そうこうしているうちに大広間に着いた。1年ぶりの大広間には全刀剣男士が集まっていた。
歌仙「では主こちらに」
「ありがとうございます」
歌仙兼定の案内の元私は上座に座った。
本当はこんなところに座りたくなんてないが。
作り笑いをして私は話し始める。
「本日はお集まり頂きありがとうございます、皆様が集められたということはこの本丸にとって大事なことであるのは数人は察しているでしょう」
退屈な話である。でもこれは私にとっても大事なことである。
「2ヶ月後、私はこの本丸を出て行きます、新たな審神者は明日より見習いとして来ますので、皆様仲良くしてやってください」
そう言うと皆様は驚いて絶句していた。
想定通りである。
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作者名:一ノ瀬ミルク | 作成日時:2022年9月18日 0時