黒服の秘密のお仕事

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「新曲もよろしく」
「ダメだ」


何を言うかで
さっきからこの会話

私はまだ机から顔を上げれていない


何なの、この人

自分は平気そうに…


背もたれに回された腕を外してよ

…外されたら寂しいけど






顔を上げて
紫耀くんの方は見れないから
前に並んだボトルを睨みながら

「寒いのにわざわざ来てくれてありがとうってイヤミでも言えば？」


「ぁあ〜アリだな。気づかうようにも取れるし、記者はわかるからな」

紫耀くんが

「パンチ足りなく無い？」

どれ程の爪痕残したいんだろ

「コンサートに来てくれたファンに言うようにキラキラ笑顔で蕩けるように言ったら。記者は男でもファンになるんじゃない？」

まだ悔しいので
ちょっと投げやりに言う

「も〜なんなら、お伝え出来ることありません、も言わなくていんじゃない？ひたすら、僕のためにありがと〜！みたいな」


「一人コンサート？」
「記者集まってるならもぅ出待ちじゃないですか？出待ちなら慣れてますよね」

想像したら
シュールな光景だと思った

記者はポカンだよきっと
発言と表情を記事にしに来てるのに

好きになって帰っちゃうよ


ちょっと胸がチクっとした


わざと背もたれに体重を預けてみる
紫耀くんの腕は外れない

触れる面積と熱が広がって
背中に神経が集中する




ムズムズして

ふと浜田を見ると電話したまま


「紫耀、副社長はそれでいけって。ゆう、電話代われって副社長が」


「へ？」

浜田が携帯を渡してきた
おそるおそる


「はい、お電話代わりました。平野ゆうと申します」

相手は柔らかく笑って
名前を告げてから

普段のお声掛けの仕事と
皆さんと友達になった事を
『ありがとう』
と言ってくれた

「いえ、手助けしか出来ていませんが…」

とても優しい声で
どうしても個人へのケアが後手に回ってしまう事と、はけ口の場所にBARを使っている事を申し訳ない、と

助かっている、と仰ってくれた


「いえ、出来ることでしたらいつでも。…はい……はい…ふふっ…わかりました…はい代わりますね、失礼致します」

携帯を浜田に返す

優しく話をする人なんだな
聞き心地がすごくいい声だった





「何話たの」

呟く紫耀くんを
つい見てしまった



なんで眉間に皺があるの


「副社長と何話したの。さっきまで適当な顔してた癖に…ゆうさん、ニヤニヤして気持ち悪い」

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