黒服の秘密のお仕事

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コンコンッ

「失礼します、お疲れ様です。大会場、明日の婚礼セットで終了しました。サイン下さい」

宴会ホールの事務所で
今日働いた派遣、全員分のタイム表に
サインを貰う

主任が定型文のように

「お疲れ様、困った場面はない？」
「大丈夫です。トラブル無しです」

サインを終えて
控えを私に渡そうとして

「この後、BARに顔を出してってさ」
「…雑用ですか？」


「まぁ…どうかな…想像はつくけど」

珍しい
主任の歯切れが悪いな

「了解です」
「着替えてから来いって言ってた」

滅多にない注文だ
いつもはどこかの部署に届け物を頼まれてホテル内を歩き回るため
制服で行くのが標準だ

…なんの為だろう

ふと
先日、BARで私服になった事を思い出した


「…今日キラキラ人はいますか？」

「キラキラ人…その言い回しを使ってるとアイツみたいになるぞ……平野紫耀様が入られてるみたいだ。会社から。それと…明日の朝のドアマンの増加が決まったらしい」

個人では無く会社から、で
ドアマンの増加

いわゆるスキャンダル対策を指す

「他にはありますか？」
「以上です。お疲れ様」

挨拶して部屋を出る

会社からかぁ
こりゃ本格的に何かあったな


わざわざ着替えてからって言ったんだから
あんまり良くない感じかなぁ…


眉間に皺が出てるんだろうか


……とりあえずスッピンになっとくか


着替えながら盛大にお腹がなった

ご飯食べてないからお腹空いたな…
隣のコンビニに寄ってから行こ

紫耀くんが居るなら…

好物は…っと

検索かけて携帯を見ながら

棚にぶつからないように
見つけたものだけをカゴに入れていく




コンビニ袋二つを抱えて
閉店時間が過ぎてるBARへと入ると

カウンターに紫耀くんは見当たらない

閉店作業も終わってるはずなのに

何か…変…？

どことなく居心地が悪くなって
思わず視線がカウンターの主へとすがる


少し硬い声で


「…個室に居る……無理ならすぐ戻れ。俺が何とかするから」



ぁあ…
私では無理な何かが起きたんだ

それでも
後ろに浜田が居ると思うから

まだ…大丈夫
まだ…
何か助けになれる事があるかもしれない

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