春を告げる花 01(兄) ページ32
ｰｰｰｰ
｢担任の兄者です。よろしく｣
｢･････････！｣
教壇に立つスーツの男性に目を奪われた。
すらっと背が高くてシュッとした顔立ち。
低い落ち着いたトーンの声。
その日私は先生に恋をした。
｢うーん･･･部活かぁ｣
部活紹介の後、沢山もらったチラシを眺めながら
どの部活に入ろうか悩んでいた。
入部は必須じゃないけど、せっかくなら入ってみたい。
でもどれに･･･
｢A｣
｢！｣
突然呼ばれた名前。
顔をあげればそこには兄者先生が立っていた。
｢そろそろ教室閉めるけど｣
｢あっ、すみません。すぐ帰ります｣
｢･･････部活悩んでんの？｣
先生の視線は私の机の上のチラシに向けられている。
｢はい、何か部活はしたいんですけど
これだけあると悩んじゃって･･･｣
｢ふぅん、じゃあもっと迷わせてやろう｣
｢へ？｣
そう言って先生は小脇に抱えた教材のあいだから
チラシを取り出して私の机に置いた。
｢演劇部･･････？｣
｢顧問として部員勧誘の手伝いな｣
口端を少し上げて笑う先生。
｢･･･っ、か、考えときます｣
(やばい！)
かっこよくて顔が見れない。
慌ただしく荷物をまとめて立ち上がる。
｢先生さようなら｣
｢演劇部をよろしく〜｣
そう言って手を振る兄者先生。
｢演劇部･･････｣
家に帰った私はベッドの上で兄者先生にもらった
チラシを眺める。
他にも色んな部活のチラシがあるけど
それはカバンに入れたまま。
私の中での選択肢は2つ。
｢演劇部に入るか･･･部活しないか･･･｣
(でも･･･)
自分が演劇なんて考えたこともなかった。
演劇部に入れば兄者先生との関わりも
増えるかもしれない。
そんな不純な動機しかないのに入部して
ついていけるのか･･･。
｢うーん･････････決めた！
やってみたら楽しいかもしれないし！｣
すぐにカバンから入部届けを取り出して
クラスと名前、入部先の部名を書いた。
｢よし･･･｣
｢入部届け持ってきた人は放課後までに提出な｣
(よし･･･！)
ホームルームの後、入部届けを兄者先生に渡しに行った。
｢先生、書いてきました！｣
｢お、演劇部入ってくれんだ？｣
｢はい。やった事ないけど兄者先生に勧誘されたら
入らないわけにいかないじゃないですか｣
私の言葉に先生が笑う。
｢それは感謝しないとな｣
放課後、私は勇気を出して部室のドアをノックした。
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いつもの曜日、いつもの時間 01(弟)→←俺の下心は空回り 01(乙)
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作者名：そすんさー | 作成日時：2018年3月12日 0時
