おわりとはじまり 01(弟) ページ11
ｰｰｰｰ
週末、友達が飲み会するからって誘われた。
別に予定もないし、飲むのは好き。
そんな軽い気持ちで今
テーブルに着いてるわけだけど･･･
｢もしかして、A？｣
｢弟者くん･･･？！｣
飲み会のメンバーの中に懐かしい顔が。
｢久しぶりだな、元気？｣
｢うん、元気だよ。弟者くんは？｣
目の前にいたのは
中学の時に同じクラスだったA。
その当時はあまり話せなかったけど
密かに好意を寄せてた。
｢すごくカッコよくなってたから
わかんなかったよ｣
そんな社交辞令みたいな言葉にすら
ドキドキしてしまう。
だって久しぶりに会ったAは
あの時と変わらず可愛くて、
でもあの時より綺麗になってる。
当時の甘酸っぱい気持ちが蘇ってきた。
仕事の話や近況、今はお互いに恋人がいないとか
たわいもない会話で一次会はお開き。
二次会はカラオケに行くことに。
一次会で話が盛り上がった俺たちは隣同士に座った。
｢弟者くんは何歌うの？｣
｢うーん、なんでも歌うけど･･･｣
｢そうなの？じゃあ･･･これ知ってる？
私この曲好きなんだ｣
｢そうなんだ、じゃこれ入れようかな｣
俺の言葉に嬉しそうに頷くAは
歌を聴いてる間もじっと画面を見つめてた。
｢弟者くん、ほんと上手だね。
もう１曲リクエストしてもいい？｣
そんなことを言われたら断れるわけがない。
｢いいよ。どれ？｣
｢んっとね･･･｣
｢！？｣
俺の手元にあるパットをAが覗き込んでくる。
縮まる距離。
軽く触れる膝。
目の前でサラリと揺れる髪。
女の子らしい香り。
心臓が口から出そうだ。
｢これ！歌える？｣
パットを操作したAが顔を上げれば
至近距離で目が合った。
｢へっ、あ、歌える！入れるな！｣
慌てて顔を逸らし曲を入れる。
ほかの人が歌ってる間も俺のドキドキは止まらない。
だってずっとAの手が俺の手に触れてるから。
小指と小指がほんの少しだけ。
(ダメだ･･･こんなの誤解してしまう)
俺はこれ以上勘違いしてしまわないようにと
名残惜しさを感じながら手を動かした。
｢弟者くん｣
その瞬間、名前を呼ばれ動かした手を握られる。
視線を移した先には少しまゆを下げたAが。
｢やだった･･･？｣
その言葉と表情に俺の心は掴まれ、
長年の片思いが終わりを告げた。
ｰｰｰｰ
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作者名：そすんさー | 作成日時：2018年3月12日 0時
