Flowerwall (ページ50)

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Side Masahiro.

ポーランドでの記念大会に来ている俺達は、地元ポーランドとの初戦を落としてしまった。取りきれなかった一セット目、力の差を見せつけられた二、三セット目、多くのミスで自ら自分達のバレーができない展開へと持って行ってしまった。
次のフランス戦へ切り替えようとなるものの、移動のバスでの口数は全員少ない。
一人を除いて。

高「うわ、えっぐ！！」

前の座席から、沈黙を破るような声。
うるせえと山内からツッコミを受けるのは高橋だ。

シートの隙間から覗くと、高橋はスマホで女子の試合を見ていた。

柳「それ...昨日の？」

高「そうっす！花井さんのワールドカップデビュー戦っす！」

その言葉に俺と、そして、隣の祐希が反応する。
結果は聞いていた。ロシアとの試合で、フルセットで負けたと。こちらも試合期間中なので中身までは見れていなかった。

高「サーブで四連続得点って、心臓化け物かよ」

石柳「「見せて」」

声がかぶり、互いに顔を見合わせる。
見せてもらった第一セット、日本リードの中Aにサーブが回る。彼女のルーティンに既視感を覚える。

石「...Aさんのサーブルーティンってマサさんと一緒だよね」

だからか。

一本目と二本目のジャンプサーブに相手は全く手が出ない。
こちらも言葉が出なかった。確実にエースを封じにいってる。針に糸を通すような、正確なコントロールだ。
それに彼女の表情は、初めてのワールドカップ、大衆の歓声、そんなもの自分には関係ない、そう言ってるように見えた。

タイムアウトを挟んでの三本目はジャンプフローターに切り替え、後ろ気味に構える相手を嘲笑うかのように、容赦なく前に落とす。
四本目はもう一度ジャンプサーブで、相手を弾く。それも守備の要のリベロを。

柳「...まじかよ、こいつ」

気づけば周りの選手も見入っていた。

サーブだけじゃない。
スパイクのコースの幅が広がっている。ストレートが苦手な傾向にあり、クロス偏重だったはず。
それに強打一辺倒なスタイル。それが硬軟織り交ぜて、軟打で確実に得点しては、射抜くような強打がコートに落とされる。空中での判断が良くなっている。

彼女の攻撃にブロックが、判断できず振り回されているようにも見える。

石「ジャンプからフォーム整うのが速くなったよね」

スパイクにおいて彼女が習得しようとしていた部分。
祐希からコツを得ようとしている姿を見てきた。

それを得た彼女は、もう無敵と言っていい。
もう誰も、彼女を無冠とは呼べない。

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