Flowerwall (ページ29)

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「セッターですか？」

オランダでの年明けを経験し、チームの練習が再開して少し。
練習前に呼び出され、突然のポジション変更に戸惑いを隠せなかった。

『一時的な穴埋めだ。サラが回復次第、すぐに戻ってもらう』

セッターのサラがもともと患っていた腰痛が悪化し、少しの間休養が必要になった。
選手の移籍もあり、現状セッターがサラしかいなかった為、二試合分代理のセッターが必要になる。
二試合分というのは期間で言うと一ヶ月。三ヶ月の留学の一ヶ月をセッターとして務めるということだ。

「...経験ありませんが、努力します」

『スパイカーとしての視野も広がる。頑張りなさい』

監督との打ち合わせが終わり、練習に戻る。
今日から私がトスをあげる、そのことにチームメイトも少し戸惑っていた。

一番基礎的なオープントスだって、スパイカーは個々で得意とする高さも速さも異なる。それを一つ一つ理解した上で、サラがトスを上げ続けていたことに改めて尊敬の念を抱いた。

オリビアは早めのネットから離したトス、セシルは少し短め、ターニャは...どうだったっけ。

『A、もう少し高いのが欲しいわ』

「ごめん、もう一本」

もういいわ、と手を挙げるターニャとは目が合わなかった。こんな状態なのでコンビトスはもっとぼろぼろ。
その日の練習は、予定よりも早く終わりを告げられた。

「少し練習して帰る」

エ「私今日はもう少し時間があるから付き合うわ」

アメリカ留学時のチームメイト・エマは今は見習いアナライザーとしてチームについていた。
その日は彼女に甘えて、自主練に付き合ってもらった。

それから私の試練は続く。

「ごめん、今の高かった」

『大丈夫、頑張って合わせましょう？』

「ごめん」

カットが乱れた際のセットアップがこんなに苦労するなんて。スパイカー一本でやってきたバレー人生を少し呪った。
私のトスが、チームのストレスになりつつある。
次の試合は5日後、時間が足りないのを日に日に感じていた。

練習後も、カットが乱れた際を想定しての2段トスの練習。一番トスが集まるターニャの好きな位置に合うように目印をつける。

自分でさえ、自分が上げるトスは打ちづらいと思うだろう。もっとゆっくり高く上げてもらえれば、助走だって充分に確保できるし、ブロックや相手の動きが見えやすい。
美弥さんや遥だって、そうしてくれる。

「違い過ぎる...」

今までの視点と、バレーにおいて司令塔と呼ばれるセッターの視点が。

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