Flowerwall (ページ24)

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柳「なんでいるの」
「なんでいるんですか」

日本を発つ前の最後のメディカルチェックの為、今日はトレセンに来ていた。
そこにマサさんがいるとは微塵も思っていなかった。
マサさんの周りを行き来する人たちのウェアを見てサントリーサンバーズの人たちだと気づく。

柳「そういえば天皇杯終わったら決めるって言ってた件どうなったの。青学、ファイナル行ってなかったし結構前だと思うんだけど」

「あー、それは」

私が口籠ると、彼は不機嫌そうな顔に。

柳「連絡してくれるかと思ってた」

「ごめんなさい」

柳「...許す」

そう言うと少しはにかんで、マサさんの手が私の頭に乗った。

柳「で、どうすんの」

マサさんの耳を借りて、行き先を伝える。

柳「え！？」

「まぁ、そういうことです」

経緯を話すと、少し信じられないような表情を浮かべていた。

柳「かなりぶっ飛んだな」

「時間が足りないことや自分の適応力の無さを痛感して。荒療治にはなるかもだけど、どんなコンディションでも点を取れる選手になりたいんです」

型破りどんとこいです、と言うと笑われた。

柳「祐希に感化されたんじゃない？」

「...言うと調子乗るから本人には絶対言いませんけど」

柳「わかる」

俺も、とマサさんは呟いた。

柳「俺もこっちで経験積んで、早いうちに海外行こうと思ってる」

「感化されました？」

柳「祐希じゃなくてAに？」

「恐れ多いな」

こんな事話してるけど、1年前までは想像もしていない光景だ。柳田将洋を「マサさん」と呼びながら近況報告してるだなんて。

高校生の自分に言いたい。
毎日サーブの練習やってたらここまで来ちゃったぞと。ちゃんと練習しとけよと。

スタッフがマサさんを呼ぶ。休憩は終わりのようだ。
行きますか、と立ち上がる。

柳「...次いつ会えるかな」

「一応三ヶ月の予定なんで。またすぐに連絡しますよ」

そう言った瞬間、腕を引かれ抱き締められた。

「え、マサさ」

柳「...待ってる」

一瞬身動きが止まる。
いやでもこれは激励のハグということだ、そういうことだ。ちょっとドキッとした。

体が離れて、深呼吸して落ち着かせる。

「三ヶ月後...代表招集の頃、ですかね。次も選ばれてるかな」

柳「選ばれるだろ」

「だって、私...何にも功績ないですし」

柳「大丈夫、そのまま思い切りやってればいい」

そのまま過去に例のない、初めての選手になってしまったらいいのだと。

「なれたら、面白そうですね」

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