Flowerwall (ページ17)

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#16 ページ17

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「石川、今日すげーな」

中央大の誰かが言った。

南米合宿で、世界と触れて彼の何かが変わったのかもしれない。
鬼気迫る石川くんのスパイクを、途中からブロッカー達は止めることができなくなっていた。ミドルブロッカーを担う彼も、決められるたびに顔を歪めていた。

一点取り返し、慶應のサーブ。
マサさんだ、撮っておこう。
足首の違和感を感じさせないほど綺麗に飛んだ後に放たれたサーブは、相手選手が触れることなく決まる。
そのままの勢いでボールは壁面に座る私の真横にぶち当たった。
たぶん当たればひとたまりもなかった。

「......」

悪いと言うように手をあげるマサさん。
大丈夫と応えて手をあげる。

練習試合が終わり、私は彼を待つためにベンチに座っていた。
アルバムを開くと、今日撮った動画でみっちり。ほとんど石川くんとマサさん。

石川くんのスパイクシーンを再生する。

「......ムカつくほど綺麗」

「A」

チームと解散して、彼がやってきた。
一瞬視線が下に落ちる。たぶん私のタブレットを見た。

「今日調子よかったね！ゆうきのバレー久しぶり見たなぁ」

「......あのさ」

彼の声のトーンがいつもより下がっていた。

「ん？」

タブレットをバッグに入れてベンチを立つ。
立ち止まったままの彼に、帰ろうと声をかけるが動かない。

「別れよっか」

一言絞り出すように言った彼に、私は、は？としか言えなかった。
そのまま会話が止まる。

「...なんで？急に」

「もう、見てるもんが違うでしょ」

「違うって何が」

「今日の試合、何見てた？柳田先輩や石川でしょ？自分のプレーに生かそうって必死だったでしょ？」

続け様に言う。

「あの二人だけは次元が違う。
俺だって今までそれなりに結果残してきたけど、全然違う。その二人と今同じ目線にAは立ってる。俺は」

「待ってゆうき。
確かに2人を参考にしようとしたけど、私はあの人達程の実力は」

「実力がないって？
冗談じゃない。この前のユニバの試合とか、ちゃんと見たのかよ？」

「っ.....試合、そんなに出てないし」

「もうお前の隣に立てないんだよ！」

いつも優しい彼が声を荒げた。

「ごめん」

顔も見ずにそれだけ言って、彼は行ってしまった。

引き止めることもできなかった私はギリギリ声にならないため息をついた。

ポケットの中でスマホが震える。

「......はい」

"......飯行こ"

優しい電話の声に、少し泣きそうになった。

"そっち行くから待ってて"

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