陸頁目 ページ16
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「大丈夫？ 一人で帰れるん？」
「はい！」
「え〜でも君ちょろちょろしてるから、また道に飛び出したりして死にそうだよ？ いつ怪異に襲われるか分かんないし、俺が送ってあげる」
まだ夕方とはいえ、秋半ばとなればもう暗かった。玄矩は冥に忘れ物が無いか確認させると、事務所を出て冥の家へ向かいだした。その端くれに、牙龍に「歩幅合わせてやるんだぞ」と言われた為、超スローモーションのつもりでゆっくり歩いた。玄矩の一歩はは冥の三歩分だった。
心なしか冥は嬉しそうだった。口角が緩やかに弧を画き、肩に提げた鞄の綱をきゅっと握ってパタパタ歩く。玄矩はそれを見て片眉を上げた。
「何、なんかあった？ どしたのそんな嬉しそうな顔して」
「えへへ、お兄ちゃんがゆっくり歩いてくれるから…」
「はァ？ そんなこと？ そんなことで嬉しいなんて幸せもんだなぁ君」
玄矩には到底理解出来なかった。こんな小さいことの何が嬉しいのか。考えながら歩いては見るものの、一向にこの事に関して嬉しさは浮かび上がって来ない。
腕を組んで首を傾げながら歩く玄矩に、冥は小さく笑った。「お兄ちゃんは優しい人だもん」玄矩は益々眉間にシワを寄せた。自分を優しいなんて言う人は初めて見たかもしれない。自分でも自分は酷い奴だと思っているのに、この子は一体どういう価値観をしているのだろう。
理解できないのに、意味がわからないのに、そのまま心は暖かかった。時計の針が狂うようにぐるぐると調子が狂っていく。この感情には身に覚えがあった。“嬉しい”だ。「優しい人」と言われて、玄矩は嬉しかったのだ。心臓もきゅっと締まり込んだ。自分と冥は、今同じ気持ちなのだ。「柄じゃないなぁ」そう小さく呟いて、玄矩ポケットに手を入れた。
「…君には、俺は人間に見えるの？」
すると冥は目を丸くした。意味を理解できていない事を悟った玄矩は、回答よりも先に小さく溜め息を吐いた。子供に聞いても仕様がない事に言ってから気が付いた。
勿論生物学的には玄矩は人間だ。ただ如何せんこんな怪物染みた人間なもんで、たまにそんな自分を疑いたくなる。今も疑っている。
「？ お兄ちゃんは人間だよ？」
「や、……ガキんちょには早いね。なんでもない。っつーか、お父さんは？ 家にいる？」
「いない。シングルマザーなのお母さん」
「ふーん。夜ご飯とか大丈夫なの？ それとも自分で作る？」
「…」
不意に、そこには冥の寂しさに染まった沈黙が現れた。
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Ｒ!Ｎ(プロフ) - すんげぇ…かっこいいですね (2019年12月13日 0時) (
レス) id: 5067a2983b (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます、勿論です！ 是非描かせて頂きたいです！ (2019年10月21日 0時) (レス) id: 62819c8559 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - わ〜ﾂﾂフォーマルな玄矩君めっちゃかっこいいです…！優先順位は低めで大丈夫なので、暇ができましたら攸のドレスコードを描いていただけないでしょうか…？よろしくお願いします！ (2019年10月20日 23時) (レス) id: a16637a9e2 (このIDを非表示/違反報告)
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