「Hi ナマステ Hello、ようこそラトナラジュ東京へ！」(前編)

4、マハラジャ　side-K ページ6

　
　
　
従業員だけじゃない。



客までもが皆、マハラジャに平伏す。



本来客をもてなす側のホストが、まるで逆転してる。



客も自分が推してるホストを、そこまでの地位に就けたくて頑張ってる。



シュードラから付いている客の中には、担当がマハラジャになると満足して、足が遠のく者もいるが。
　
　
　
　









K「ラトナラジュ東京へようこそ。

今夜もマハラジャの世界を楽しんでいってよね。」



俺が腰の低い紳士でいるのは、ここまで。



一旦席に着いたら、後は虚構を楽しむ場になる。



俺は手も添えずに片手でぞんざいにボトルを傾け、客のグラスを満たしてやる。



K「飲めよ。」



言われた通りグラスを煽った客が、酔って俺にしなだれかかる。



オイオイ、偶然装ってソコを触るな。



K「俺を誰だと思ってる？

マハラジャ様に民が気安く触るなど頭が高いわ！」



こんな風に応対するのは、一応マニュアル通り。



リアルなマハラジャやラジャが、何百もある藩王国の王として栄華を極めていたのは、インドがイギリス統治下の時代らしい。



ナンバーワンをマハラジャと呼んでいるこの店に、客は何を望んで来るのか。



客はマハラジャの俺にどう振る舞って欲しいのか。



店は良くわかっていて、マハラジャの服務マニュアルがある。



俺はそれに従ってマハラジャを演じているだけ。



素の俺からしたら、不本意なキャラでもある。



笑顔を振り撒いて、威勢良く飲んで騒いで、たまにはちょっとあざとく甘えてみたり、何なら本当のハーレムみたいに、他のキャストを従えて踊ってみせたりしたいくらい。



本来ホストは客に奉仕する側の人間だが、客への奉仕をしないとなると……



逆に客を楽しませる手段が、己の存在のみという事になる。



だから誰がマハラジャになっても、マハラジャでい続ける事は難しい。

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