「Hi ナマステ Hello、ようこそラトナラジュ東京へ！」(前編)

34、緊急事態　side-K ページ36

　
　
　
指名客だから簡単に俺に堕ちるだろうと思ったのだが、金離れが良いだけで全く靡いてくれない。



いつもと勝手が違う。



そのせいで、俺は多少躍起になっている。



次の指名客のテーブルに回らないといけないのに、ソイツから離れられなくなった。



さて、どうしたら良いだろう？



K「ああっ！

ヤベ！！」



俺は偶然を装って、シャンパンフルートに袖を引っ掛けて倒した。



ソイツの腿にシャンパンがこぼれて、シュワシュワと泡が音を立てて弾けた。



「すぐに新しいおしぼり持ってきますっ」



ヘルプのシュードラが勢い良く立ち上がった。



K「あ、レストルームに案内するから。

そっちに持ってきてよ。

多めにな。

あと新しいグラスにシャンパン注いで、一緒に持ってきて。」



「了解しました。」



K「緊急事態だから、ちょっとアッチにこもるわ。

待たせてる指名客は、適当に繋いどけ。

俺に会いたくて来てるなら、大人しく待つだろ。」



シュードラに耳打ちして俺は立ち上がる。



K「こっち来いよ。」



俺はソイツを促し、クシャトリア専用のレストルームのパウダースペースへ案内する。



もしかして、沢山人のいる場所で顔を晒したくないんじゃないかと、俺は考えた。



名前も呼ばれたくなけりゃ、シャンパンコールで目立つのも嫌がるし。



芸能人だったりしてな。



二人きりになったらマスクを取ってくれる？



俺がそこに入ったら、他の誰も俺の許可無しにそこへは立ち入らない。
　
　
　
　








シャンパンで満たされたグラスが2脚と、山盛りのおしぼりが届けられて以降、邪魔者はいなくなった。

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