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ベッドから光が差し込み、思わず避けるように顔に腕を被せた。ハッとなり慌てて起き上がりスマートフォンの電源を入れれば時刻は13時ちょうど。就寝したのは22時、唯一の救いなのは今日が非番だったということだ。


私は力が抜けたようにベッドに再び体を頬り投げた。


窓の隙間から家の周りの桜の木が満開に咲いているのが見える。やはりあれから、これと言った進展はなく四月の中旬、世に言う出会いと別れの季節でもある。


――嫌な感じだ。


ぼーっとただ風で揺れる桜の木を無意識に眺めているだけで、まるで嵐の前の静けさのような嫌な胸騒ぎがする。


12月から目撃情報もこれと言った新たな情報もなし。

世間から国際指名手配犯の記憶は日に日に薄れていくばかり。

もしかして、すでに国外へ逃亡してしまっただろうか。それとも自決?…いいや、その可能性は低そうだ。


非番だというのに、体はベットの上でも頭はそうはいかないらしい。これで私も立派な職業病か。もう降谷くんのことも言えなくなる。


するとベッド近くのサイドテーブルに置いてあったスマートフォンから着信が入った。

ゆっくりと体を起こし、寝すぎたせいもあってかまだ少しのぼせている脳のままスマートフォンを手に取ってみると着信には「沖矢昴」と名前が表示されている。


――赤井さんだ。


きっと、また新しく情報を得たのだろう。私は寝ぼけた脳みそを切り替えるかのように頬を片手で軽く数回叩き着信の応答ボタンを押した途端、食い気味に「情報ですか!」と最初に口走る。


「ああ、頼まれた身元調査だが……残念ながら誰にその大金を手渡したのかは、さすがにわからなかったよ」


沖矢さんの声ではなく、赤井さんの声でそう伝えられる。私は「…だと思いました」と小さく肩を下げた。


「でも、他の人に比べて空白がかなり多いのは確かだ」
「そうですよね、そうなんですよ。その理由さえ掴めれば経緯も何が目的かも、ある程度予測できるのにそれが分からないんですよ…」


私はその場に思わずしゃがみ込んで俯くと床の木目を指でなぞりながらそうふつふつと語る。


「…でも、多分…ですけど。根拠は相変わらずですけど…真実は見えてきました」
「真実…?」


赤井さんにそう問いかけられると同時に私は立ち上がってスマホを片手に寝室を出た。



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作者名:冬 磨 | 作成日時:2022年11月13日 14時

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