07.大切にしたい事。 ページ7
りょうside
「お疲れー!」
と「おつかれー」
「なに?なんか元気ないじゃん」
と「別に」
そんなとしみつはやっぱりどことなく悲しい顔をしていて、Aがあの時していた表情と似ていた。
「本当に似たもの同士だなー」
と「何が?」
「なんでもない。ところでとしみつ、最近あった楽しかった事は?」
と「なん?それは。」
「いや、最近話してないからさ」
と「別に何もなかったな。新曲レコーディングしたくらい?」
「お!いいね!次も楽しみだなー」
と「また出来たらやるよ。」
話題を変えると、としみつに少し笑顔が戻った。
り「じゃあ…最近あった悲しかった事は?」
ちょっと間違えたかな?またすぐ悲しい顔になった。そりゃそうか。悲しかった事を聞いたのは俺だ。
と「悲しかった…こと…」
そう呟くと、しばらく沈黙してから、グラスに残っていたビールを飲み干して、としみつが話し始めた。
と「俺さぁ、大切なものがたくさんあるんだよね。でも、それをどうしたらいつまでも大切にしておけるかが難しい。」
「なるほど。」
と「イタリア人にはこんな悩みわかんねぇよ」
「わかるよ。」
と「俺の言ってる意味…わかる?」
「としみつはさ、もう答えが決まってるんだと思うよ。だけど、行動にうつしたら、あいつと俺らとの関係が崩れるんじゃないか、とか、寂しい思いさせてあいつが悲しむなら付き合わない方がいいんじゃないかとか…考えてるんでしょ?」
と「お前、エスパーかよ。」
「ごめん、事の発端はAに聞いたんだ」
と「あいつ、なんて言ってた?」
「気になるなら、自分で聞いてみたら?A、待ってると思うよ」
としみつは自分が何を1番優先するのかわかっていないようだった。
「それかもう一つ手段はあるよ?」
と「なに?」
本当はそんな事思ってないんだ。
純粋に応援してるし、2人には幸せになってほしいよ。
ただ2人を守るための、2人を助けるための魔法。
「俺がAと付き合う」
と「ふざけんな。それだけは譲らん」
そう言ったとしみつは、なにかを決意したかのように、「ありがとな」と言って立ち上がった。
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作者名:tee(てぃー) | 作成日時:2019年9月29日 9時