7話 【ユリア】2 ページ8
「具合はどうかな」
巴様が出ていったあと、程なくして気弱な足音を立てて零斗さまがいらっしゃった。
私がいい感じですと応えれば、そっか、よかったねとだけ優しくおっしゃられた。
そして、2人とも声を雪に吸い込まれたが如き面持ちで、押し黙る。
きっと零斗様は知っていらっしゃるのだ。木下と私のことを。詳しくはないといえど、少しは分かるのだろう。
先程からその気弱そうな顔をさらに気弱げに歪めながら、思考を右往左往してるように思える。
ーーーーだから、私から言ってみた。
「木下様は多分、私をお嫌いになられているのです。私をいつもお家から遠ざけようと、歓楽街に売りに出そうとしたり、従属者の手続きを行ったり。だから、私もあのお方が嫌いなのです」
「……そうか。よく話してくれたね。ありがとう。じゃあ僕も、僕の話をしようか」
零斗様は、ご自身の身の上話をそれはそれはこと細やかにお話になられた。
幼き日に、突然巴様が【ユリア】になられたこと。それによって地位がぐん、とうなぎ登りしたこと。だが、自分にそんなに欲はなく、迷っているうちに阿国様の補佐となって国を動かす羽目になってしまったこと。だが、自分にそんなに才はなく、結果娘の巴様に頼る形になってしまっていること。
巴はすごいのだと、陶酔しきった顔で零斗様は言う。
【ユリア】としての才も自覚もあり、舞もできて、こんな父上でも慕ってくれているのだと。
その顔があまりにも誇らしげで、私は少し気後れしてしまった。
だって、まるで巴様と零斗様が、【ユリア】という信仰的な存在に、身も心もすべて捧げ、囚われているような言い方をしていたものだから。
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ましら(プロフ) - fruitさん» 返信遅れてごめんね!そう言ってくれて凄い嬉しい!読みにくいし作品はバンバン消すわの私の作品を追いかけてくれるなんて、凄い嬉しいよ。fruitちゃんの優しいところ凄い好き。コメントありがとう! (2017年9月16日 21時) (レス) id: 512c5a6245 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - おおー!またもや面白そうな作品で・・・!この作品も追いかけさせていただきます(^。^)更新頑張ってね!! (2017年7月26日 21時) (レス) id: e09a409b3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましら | 作成日時:2017年1月30日 16時