･ ページ21
茅野side
恐怖の感情で満たされていた教室は息を潜め、皆の見つめる先、先生とAちゃんを中心に異様な雰囲気が立ち込めた。
「自分も殺してくれ」そう彼女は言ったのだ。この教室において自ら進んで先生に殺されることを望む人は、後にも先にも彼女しか居ないだろう。
動かない先生を促すように彼女はより強く、銃口を自らの胸に押し付ける。引き金に指を掛けない先生の手ごと包み込み、彼が銃を放さないように力を入れた。口から漏れ出す言葉は初めの時と変わらず、私も殺して。何度も何度も、願うように先生の瞳を見ながら話していた。
｢お前はまだ殺さない｣
『今お願いします』
｢…お前は殺さない｣
『お願いします。私を殺して柊先生』
互いに眼をそらさない。ボロボロと涙を流すAちゃんと無表情の先生。何度もそのやり取りは続いた。殺して欲しい彼女と人質が無駄に減るのを避けたい先生。
『引き金を引いてください』
｢断る｣
『ここに血が飛び散るのを避けたいのなら、何処か別の場所でも』
｢お前はここから動くな｣
『……殺して』
｢殺さない｣
そう思ってたのは初めだけで。先生は無駄に人質を減らすことを避けたいんじゃない、彼女を殺したくないからだと気づいたのは、彼女らがやり取りを続けて暫くたってからだ。
『その5人の誰か一人の代わりでもいいです』
｢お前に代わりは務まらない｣
『人質の人数は当初の予定から変わりませんよ』
｢お前の代わりは……｣
彼女のある問いかけに、先生が一瞬顔をゆがめた。それはそれは苦しそうに。
｢お前の代わりは居ないだろッ……｣
『せんせ？』
｢お前が代わりになっても、お前の代わりは居ない…………俺は、北原を、殺さない｣
『……』
Aちゃんを殺したくはない。その想いが痛いほど伝わってきた。先生はきっと誰も殺したくなどないのだ。その中でもいちばん大切にしているのが彼女で
｢いや、殺せない。殺したくない。だから、｣
そこまで言った先生は銃を持つ反対の手で彼女のお腹を殴った。ドスッと鈍い音が聞こえたあと、気を失ったのか彼女は力無く倒れおちる。
それを支えるのは勿論先生で、小さくゴメンな、と聞こえた気がした。
ゆっくりと床に彼女を寝かせ、5人の人質を連れて先生は教室を出ていった。
5人は殺される恐怖に再び襲われ声を上げていたが、教室で腰を抜かし逃げ惑っていた皆はポカンとしていた。
それから程なくして隣の美術室から爆発の音が聞こえた
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 352人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！ (2022年8月20日 18時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎(プロフ) - 初めまして！柊一颯落ちで物凄く嬉しいです！！更新待っています！これからも頑張ってください！！ (2021年2月26日 21時) (レス) id: bdaf0ebad8 (このIDを非表示/違反報告)
くすさな(プロフ) - しろごめさん» ありがとうございます！柊先生オチです(≧ω≦)bこれからもよろしくお願いします(*^^*) (2019年3月16日 8時) (レス) id: 780399e946 (このIDを非表示/違反報告)
しろごめ(プロフ) - コメント失礼します！ぶっきー落ちと聞いて見に来ました！笑更新頑張ってください、応援してます！！(*´∀｀*) (2019年3月15日 23時) (レス) id: f6e80c062e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くすさな x他1人 | 作成日時：2019年3月14日 23時
