８６ ページ37
ふぅ。息を吐く音が鮮明に聞こえてから、屈託のないような微笑を浮かべた。
こんな空気があるのかも不確かなところで、息をついてこんな清くなられては困るのだけど。
「いつだったかなぁ…」
話し始めて、もうあの三日月さんと区別をつけようがなくなっていた。
黒いオーラが消えていたのだ。
思い出話といったら、さにわさんなんだろうが、この人はさにわさんを殺した女が顕現したんじゃなかったっけ？
…おかしいな。
「俺が顕現されて間もないころだ。…」
声と映像が重なる。
俺は、顕現されて視界の高さ、記憶の鮮明さ、景色の色や形、何よりも自分の意志で行動できることがとても新鮮で、何事にも驚き、楽しかった。
一枚絵のように景色がぼやけては現れ、顔が不鮮明な神様方も時折姿が見える。
審神者が、あんな女じゃなければ、と何度でも思う。
俺が顕現されたのは女が来て間もなかった。
…優しく、太陽のような
あの女は初め、この本丸に見習いに来ていた。
たかがひと月で、こうも幸せというものは崩れるのだな。
ひどく苦しかった。
俺は、あやつの、…例えるとすればそうだな。あふれんばかりの…、いや…、無限に広がるような、包み込まれるような…。
…そんな、温かい声、微笑、笑顔、すべてが、好きだったなぁ…。
俺だけじゃなく、皆、そうだった。
人間は、こんなに美しい景色を見て笑っていたのかと、何百年と存在してきて、今が一番幸せだと思っていた。
…そうだな。初めは嬉しいというのも楽しいというのも、悲しいもなにもかも感情というものが新鮮だった。
それを教えてくれたのはあやつだったなぁ。
それから、ぱっと暗くなった。
「女が伽をしろと命じたのは、見習いにやってきて三週経った時だ」
目を開けると、薄らと殺気を帯びた三日月宗近がいた。
また、目を閉じる。
女は、うまく言霊を使った。
俺でも気が付かないほど強く繊細に。
後に知ったことだが、俺を顕現したのもあやつには言わずにした行動だった。
勝手な行動なのに、あやつは見てみぬふりをし、そんな行動を見てからか刀剣たちも同等に仲間として接してくれた。
…で、何が言いたいんですか。
聞いてみると、苦笑を混ぜたため息が聞こえた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 392人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ニャンコソバ２(プロフ) - 若葉さん» うわぁあ！！まだ見てくださってた方が…！！ありがとうございます頑張れます…！！ (2020年11月8日 10時) (
レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 更新待ってます！ (2020年11月8日 1時) (レス) id: 5ef262c096 (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ２(プロフ) - 幸別愛友さん» ありがとうございますー！！！これからもどうぞよろしくお願いします！！ (2019年12月14日 6時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - この世界観すごく好きです！続きがすごく楽しみです！待ってます！！ (2019年11月12日 23時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ２(プロフ) - さらさん» うわぁあありがとうございます！！！！！オチは悩み中です…。いきあたりばったりで書いてる駄作者なので…。 これからも応援よろしくお願いしますっっっ (2019年11月5日 22時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ニャンコソバ | 作成日時：2018年12月31日 17時
