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「ん……?」
耳に痛いほどの静寂の中で、擦り切れた声がぽとりと落ちた。
『あ、薬研さ…』
反射的と言えるだろう速度で名前を呼んで、その顔を見た。
ぼんやりと半目が開き、口も開いて、相当負担がかかっているのか、苦痛に顔を歪めていた。
「お、起きたか?」
鶴丸さんは退屈そうに暗い外を見ていたが、私の言葉に反応してかこちらを嬉々と見た。
「あ、あぁ…」
むくりと起き上がり、私と鶴丸さんを交互に見いると、急にびくりと肩を揺らして目を見開いた。
「だ、旦那」
少しだけ頭が回りだしたのだろう。
一言だけこぼして、状況を理解しようとしているのか固まってしまった。
「ん、なんだ?さっきぶりだな?」
にこりと笑って言う鶴丸さんは、状況をわかりやすく、わかりにくく伝えた。
「さっき…ぶり」
ばっ、と顔を上げ、私の肩を掴んで、ものすごい険相で叫んだ。
「す…ず!!」
.
.
.
『へ、?』
理解が追い付かなかった。
「だ、大丈夫なのか!?怪我とか…」
めずらしく、薬研さんが焦っているようだった。
いや、それよりも、だ。
『だい、じょうぶ…です、が、あ、あの…な、名前…。なんで…?』
.
今、私はどんな目をしているだろう。
どんな表情をしてしまっているのだろう。
後ろに手をついて、ずりずりと後ずさる。
神隠し。
されて、しまえる状態に陥ってしまっている。
鈴
そう、薬研さんは口にした。
私に向かって、私の目を見て、言った。
「名前?」
鶴丸さんは疑問を。
「なま、え」
薬研さんは、今自分の口にした名前を思い出した。
薬研さんは口元に手を持ってきて、ちらりと見開いた目を私に向けた。
「鈴、?」
言っていない。
いや、言おうとしたことはあるが、それは薬研さん自ら遮った。
だから、その二文字を知っているはずないのだ。
そして、この場でのやばいだろうと思われることがもう一つある。
冷静を被った頭は思う。
鶴丸さんに、聞かれてしまった、と。
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ニャンコソバ2(プロフ) - 若葉さん» うわぁあ!!まだ見てくださってた方が…!!ありがとうございます頑張れます…!! (2020年11月8日 10時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 更新待ってます! (2020年11月8日 1時) (レス) id: 5ef262c096 (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - 幸別愛友さん» ありがとうございますー!!!これからもどうぞよろしくお願いします!! (2019年12月14日 6時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - この世界観すごく好きです!続きがすごく楽しみです!待ってます!! (2019年11月12日 23時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - さらさん» うわぁあありがとうございます!!!!!オチは悩み中です…。いきあたりばったりで書いてる駄作者なので…。 これからも応援よろしくお願いしますっっっ (2019年11月5日 22時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニャンコソバ | 作成日時:2018年12月31日 17時