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『う』
目を開けると、薄暗い中に影が二つ。
ひどく驚いたように目を見開く三日月宗近と、私が気が付いたのを安堵するかのように微笑む薬研さんだった。
「…大丈夫か?」
眉を下げて、私の頭に手を置く薬研さん。
『…まあ、それなりに』
曖昧すぎる返事をして、呼吸を確かめるように細く長い息を吐いた。
___俺を
___俺を、見つけてやってはくれんか
頭に響く声。
目を開ける数秒前に聞いた、三日月宗近自身の声が、頭の中で繰り返された。
『あ…』
声を漏らし、三日月宗近を見上げる。
見つける…?
三日月宗近を…?
『あの_』
何を。そう素直に聞こうと考えて、口を開いたのに。
それを遮るかのように三日月宗近は私を睨んだ。
そのすぐ後。
三日月宗近は、ずかずかと私に歩み寄り、にこりと口角を上げる。
顔を近づけ、口元に手をやった。
しぃー。
一見可愛らしく見えるその仕草は、私にはどうも二度と思い出すな、そして口にはするな、という口封じにしか見えなかった。
近すぎる距離にあるきれいな顔。
感情が表情に追いつかず真顔でいると、三日月宗近は飽きたのか、何歩か距離をとった。
「…ではな、薬研藤四郎」
えっ、散々私に対してのアクションをしてきたのに別れの挨拶は薬研さんに向けてですかそうですか。
何かに対しての謎の対抗心を芽生えさせながら私はそそくさと帰るように見える三日月宗近の背中を見送る。
「じゃあな、旦那」
またな、と、じゃあな。
また会う前提の別れの挨拶で、少しだけ戸惑ったが、殺されそうにないので置いておくとしよう。
ががががが、という戸の開閉の音がした後、薬研さんは私に向き直った。
「意外に素直だよな、あの三日月の旦那」
にかっと笑う薬研さん。
『そうなんですか』
どこから素直という言葉が出てくるんだろうという疑問は無視して、会話を続ける。
「お前に助けて欲しいんだろうなぁ」
よく分からず首を傾げると、薬研さんは真似るように首を傾げ、笑った。
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ニャンコソバ2(プロフ) - 若葉さん» うわぁあ!!まだ見てくださってた方が…!!ありがとうございます頑張れます…!! (2020年11月8日 10時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 更新待ってます! (2020年11月8日 1時) (レス) id: 5ef262c096 (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - 幸別愛友さん» ありがとうございますー!!!これからもどうぞよろしくお願いします!! (2019年12月14日 6時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - この世界観すごく好きです!続きがすごく楽しみです!待ってます!! (2019年11月12日 23時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - さらさん» うわぁあありがとうございます!!!!!オチは悩み中です…。いきあたりばったりで書いてる駄作者なので…。 これからも応援よろしくお願いしますっっっ (2019年11月5日 22時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニャンコソバ | 作成日時:2018年12月31日 17時