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それはそれは美しい微笑だった。
私が美しいとか使うなんて、違和感でしかないけど、本当に美しいのだ。
まるで、別人だ。
どうしてと問い詰めたくなるほどに。
これは罠なのだろうか。
いや、もしかして、薬研さんが言ってたのって…これのことじゃ…。
じわじわと染み出すように思い出された記憶は、どんどん鮮明になっていった。
《薬研さんって、たくさんいらっしゃるんですか?__》
薬研さんだけじゃなくって、きっと加州さんとかにも当てはまるだろう。
そして、目の前の神様にも。
逆に、そうであってもらわないと困る。
そうだ。
きっと、本当に別人なんだ。
ちらりとその神様を見ると、私が何か言うのを待っているのだろうか。
首をかしげてまっすぐと私を見ていた。
口を開くが、なにを言うべきかわからない。
だって、私はできそこな
「…して、小娘。そなたは何がしたいのだ」
急に話しかけられたものだから、びくりと肩を揺らしてしまった。
だが、優しい声にすぐに落ち着いた。
『前さにわをしてたらしい女から、その女の前にさにわをしていた方を助けたいと思って…います…』
自分の語彙力のなさにここまで絶望する日が来るとは。
「はっはっは。わかったぞ」
わ、笑った…!
その神様は、声をあげて笑った。
「こいつは前任から俺たちの主を救ってくれるそうだ」
前任…って言うのか。
前任全然善人じゃなかったよね。
。
私はすっかり目の前の神様の、優しい雰囲気にのみこまれていた。
周りにいる神様方も、襲ってくる気配はない。
「どうやら、そなたはすでにたくさんの刀を顕現しているらしいな」
私は頷く。
「薬研藤四郎もその一振りか?」
薬研さんの方を向くと、少しだけ嬉しそうに見えた。
襖からひょこっと顔を出して、
「おう。久しぶりだな、旦那」
と、明るい声で言った。
「…薬研!」
「あぁ。いち兄!」
それはまさに、運命の再会だった。
水色の髪で、軍服みたいな服を着た神様が、泣いている。
薬研さんも、涙ぐんで、なぐさめていた。
新たな一面を見たなぁなんて思ったりして、驚いていた。
「…ありがとうな、小娘よ」
遅れて反応し、私は笑う。
『私はこういうことも目標としたいです』
すると、その神様は目を見開き、ぱちくりとして、ふっと笑った。
「そうか…」
初めて感動しそうになっていることに気づいた。
羨ましい。
大切な人って、大事だなぁ。
私はまだ死ねないな、なんて思いながら、薬研さんの横顔を見ていた。
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ニャンコソバ2(プロフ) - 若葉さん» うわぁあ!!まだ見てくださってた方が…!!ありがとうございます頑張れます…!! (2020年11月8日 10時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - 更新待ってます! (2020年11月8日 1時) (レス) id: 5ef262c096 (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - 幸別愛友さん» ありがとうございますー!!!これからもどうぞよろしくお願いします!! (2019年12月14日 6時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
幸別愛友 - この世界観すごく好きです!続きがすごく楽しみです!待ってます!! (2019年11月12日 23時) (レス) id: 978af02bfc (このIDを非表示/違反報告)
ニャンコソバ2(プロフ) - さらさん» うわぁあありがとうございます!!!!!オチは悩み中です…。いきあたりばったりで書いてる駄作者なので…。 これからも応援よろしくお願いしますっっっ (2019年11月5日 22時) (レス) id: addc7bb8eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニャンコソバ | 作成日時:2018年12月31日 17時