CHAPTER 05 総統が恐れるは破滅より孤独 ページ50
「うわっ、相変わらず埃っぽい…」
資料室の扉を開けた瞬間、埃くさい空気が鼻を襲った。
その空気を吸ってしまわないよう顔を手で覆うと、代わりにエーミールくんが部屋の明かりをつけてくれる。
「すごい数のファイル……これ全部調べるのは流石に大変やで」
「確か棚のファイルはショッピくんが見てたはずだから、棚以外のファイルを中心に調べた方がいいかも」
本棚に並べられたファイルの他に、部屋の隅にもいくつかファイルが山積みになっている。
私の言葉に、エーミールくんは棚の側に重ねられた段ボールの一番上を開いて覗き込んだ。
私は埃っぽさに耐えられず「けほっ」と咳き込みながら、部屋の隅で雪崩を起こしているファイルを拾い集めた。
「……この学園について書かれてそうなファイルは一つもないな」
「茶番ちゃんが処分しちゃったのかもしれないね」
学園のことが分かれば、私たちがここから脱出する方法も分かってくるだろう。
そんなヒントブックのようなものを、あの茶番ちゃんが残しておくはずがない。
「セイコウ学園の‘‘セ’’の字も見当たれへんわ」
以前ショッピくんが資料室を調べていたときも「学園のパンフレットとかはない」と言っていたし、やはり学園に関するものは全て捨てられてしまったのか。
途端に探索に対するやる気が削がれてしまい、一緒に肩の力が抜ける。
「っあ!」
調べ終えたファイルを段ボールの中に戻していると、突然エーミールくんが声を上げた。
その声色に期待してしまい、私は慌てて彼のそばに駆け寄る。
「何か見つけた?」
「ほら、これ!Aさんの!」
「っへ?」
そう言ってエーミールくんは一冊のファイルを手に取ると、その表紙を私に見せてきた。
表紙には女の人が書いたらしい綺麗な字で「超高校級の教祖」と私の名前入りで書かれている。
「それ、中身は何なの?」
そう尋ねると、エーミールくんは私のファイルを開いて中身を確認し始めた。
「んっと、氏名、生年月日、視力、身長、体重…下の方には血圧の測定って書いてある」
「…健康診断書?」
「ぽいな〜」
私もエーミールくんの隣からファイルを覗き込む。
全て記入済みになっているが、当然こんな健康診断書を発行した記憶はない。
念のため内容に間違いがないか一つずつ項目を確認していると、私はあることに気がつき、思わず「っあ、」と声を漏らした。
そしてほぼ反射的に、エーミールくんの手からそのファイルを取り上げてしまう。
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わたうさ@火星人☆(プロフ) - 廻りさん» 生存予想で意外だと言って頂けるときが一番楽しいです…!!終盤に近付いてきて、生き残り枠も透けてきた感じがしますね!なんだそのif面白そうですね…!?もう沢山妄想してください、その言葉だけでご飯が進みます^ ^ありがとうございます!頑張ります!! (2020年9月27日 18時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
廻り - ifみたいになっちゃいますがゲームのループ物みたいに夢主ちゃんが生存に導いたりするのも楽しそうですよね……物語読みつつそんな妄想が膨らんでいく私であります。それも含めて今最高の気分で9パート全て見終わってきました……これからも頑張って!!! (2020年9月27日 2時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
廻り - いつも楽しく読んでます!!生存予想とても楽しいです。主戦力が残ってますね…!でもまさかあそこでホビットが…脱出したりするのに必要になりそうだな、とか思ったりしたのですが、とても意外な人でした、楽しい。生存キャラ残り少ないですがもっと続いて欲しい…… (2020年9月27日 2時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - ダリアさん» 読んで頂きありがとうございます!!オシオキは序盤に全員分決めたまま設定を変えていないので、好きと言って頂けて嬉しいです…!!本当にのろのろ更新ですみません!頑張ります!! (2020年9月21日 18時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
ダリア - 読ませて頂きました!オシオキめっちゃ好きです。メンバーにぴったりで続きが気になります…!わたうさ様のペースで頑張ってください。 (2020年9月21日 15時) (レス) id: 39bf6c1775 (このIDを非表示/違反報告)
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