CHAPTER 05 総統が恐れるは破滅より孤独 ページ40
「それにAさんの呼び方、結構気に入ってるんですよ」
「えっ」
嬉しいそうに言うエーミールくんに、私は驚く。
特に捻りのきいたあだ名をつけているわけでもないし、そんなに気に入られる理由が分からなかった。
「俺、くん付けで呼ばれることあんまりないから」
「…そうなの?」
確かにゾムくんやショッピくんは揃って彼のことを「エミさん」と呼んでいるが。
学校の同級生からなら「エーミールくん」と呼ばれることもあったんじゃないだろうか。
「昔はあったよ?でも高校入ってから警備員のバイトするようになって、‘‘超高校級の警備員’’って称号がついてからはなくなったかな」
そう言ってエーミールくんは調理台に軽く寄り掛かった。
何故‘‘超高校級の警備員’’になったら、くん付けされることがなくなったのか分からなくて私は「なんで?」と聞き返す。
「超高校級ってだけで、何処行っても特別扱いされんねんで。言い方は悪いけど‘‘超高校級の俺’’しか見られてない気がしてた」
「でもここの人たちは違うんです!」とエーミールくんは興奮したように、徐々に声を張り上げる。
「ここでは超高校級の称号なんて珍しくないし、普通の高校生でいられるんです!ましてや年下の女性に、同級生として接してもらえるなんて初めてで!」
「そ、そっか」
突然距離を詰めてきた彼の勢いに押され、私は軽く後退りをしながら相槌を打つ。
私の相槌を聞いて、エーミールくんは嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「っあ、今の呼び方が気に入らないなら無理強いはしないけど」と続ける彼に、私は首を横に振った。
そんなに気に入ってくれているなら、呼び方を変える必要もなさそうだ。
…呼び方か。
学校なんて滅多に行くことはなかったし、会う人のほとんどが教団の人で、呼ばれ方なんて気にしたこともなかった。
言われてみれば、自分のことを名前で呼んでくれる人なんて親族以外にいなかった。
そう考えると、私のことを一人の人間として名前で呼んでくれる超高校級のみんなは、本当に貴重な存在なのだろう。
だからこそこれ以上誰も死なせず、生き残った五人全員で学園から脱出したいのだが。
何か、グルちゃんと和解する方法はないものか。
そう思い悩む私を、エーミールくんが何処か不満そうに見ていることには気付かなかった。
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わたうさ@火星人☆(プロフ) - 廻りさん» 生存予想で意外だと言って頂けるときが一番楽しいです…!!終盤に近付いてきて、生き残り枠も透けてきた感じがしますね!なんだそのif面白そうですね…!?もう沢山妄想してください、その言葉だけでご飯が進みます^ ^ありがとうございます!頑張ります!! (2020年9月27日 18時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
廻り - ifみたいになっちゃいますがゲームのループ物みたいに夢主ちゃんが生存に導いたりするのも楽しそうですよね……物語読みつつそんな妄想が膨らんでいく私であります。それも含めて今最高の気分で9パート全て見終わってきました……これからも頑張って!!! (2020年9月27日 2時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
廻り - いつも楽しく読んでます!!生存予想とても楽しいです。主戦力が残ってますね…!でもまさかあそこでホビットが…脱出したりするのに必要になりそうだな、とか思ったりしたのですが、とても意外な人でした、楽しい。生存キャラ残り少ないですがもっと続いて欲しい…… (2020年9月27日 2時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
わたうさ@火星人☆(プロフ) - ダリアさん» 読んで頂きありがとうございます!!オシオキは序盤に全員分決めたまま設定を変えていないので、好きと言って頂けて嬉しいです…!!本当にのろのろ更新ですみません!頑張ります!! (2020年9月21日 18時) (レス) id: af7c01dafc (このIDを非表示/違反報告)
ダリア - 読ませて頂きました!オシオキめっちゃ好きです。メンバーにぴったりで続きが気になります…!わたうさ様のペースで頑張ってください。 (2020年9月21日 15時) (レス) id: 39bf6c1775 (このIDを非表示/違反報告)
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