サンジュウニ! ページ33
徹くんはハァ…ハァ…と息を上げながら、私の横に座った。
「ごめん、Aちゃん」
そう小さく、徹くんは呟いた。
「ねえ、徹くん」
「なに」
「私、知ってるよ」
「何が」
「今の練習を続けたら、徹くんがどうなるか」
「どうなるの」
「もう、バレーできなくなっちゃうよ。」
「そんなのやってみなきゃわからないじゃんか」
「わかるよ」
「…!どうして!!!」
「私だって…!私だって、怪我をしたんだ!!
それでもう、バレーはできないって言われたんだよ…」
流す予定の無かった涙。
私の中でバレーが出来ないということは、私の心の深くに、ずっと刺さったままだった。
とにかくバレーがやりたい。
バレーが好きだ。
でも、もう、怪我のせいでできないから、
遊びとしてしかできないから、
「もう、怪我をして、バレーが出来なくなる人を見たくないんだ。」
私は徹くんに、泣きながらそう言った。
徹くんは驚いたような、焦っているような、泣いたまま、私にごめんと言った。
「徹くん、大丈夫だよ。
白鳥沢には絶対に勝てるよ。」
そう言うと、徹くんは立ち上がった。
「Aちゃん、帰ろう。」
その日ははじめて、徹くんと2人で帰った。
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作者名:とまと | 作成日時:2022年9月19日 1時