【オリジナル】たいせつなひと (ページ7)

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それから、毎日放課後は練習に付き合ってくれた

ピアノを弾く気になれない時は雑談もしたし、

伴奏曲を弾きたくない時は、他の曲も聞いてくれた

休日になれば、友達を連れて家にきてくれたし

学年練習の後は、いつも一緒に反省会をしてくれた

それでも、中々上達はできず

嫌になったし、やめたくて泣いたりもした

自分でも少しずつ出来ていくのは感じたが

卒業式に間に合わなければ意味が無い

というプレッシャーと

卒業式に間に合う気がしない

という焦りに

押しつぶされそうだった

「なんで、私を推薦したの？」

卒業式一週間前、

散々泣きわめいて、暴れて、

彼に聞いた

「お前のピアノが好きだから」

私は彼の前でピアノを弾いたことがなかった

伴奏もやったことないし、

音楽の授業でもピアノは弾かなかった

「あの日も今日みたいな、

冬から抜け出した、少し温かい日だったよ」

彼は優しくそう呟いた

「委員会で揉めたあの日、

逃げたAちゃんがいたのが

音楽室だった」

その日のことはよく覚えている

6年生の先輩たちが卒業間近になり、

私たち5年生だけで仕事をすることが増えた

初めての大きな仕事や、

たくさんの仕事を

たった6人で消化するのは、とても大変だった

ついに、次期委員長がキレた

それに、ある女子が反論した

6人しかいないのに、なぜか分裂

言いたいことをただ針のように鋭く言い合って

お互いを傷つけあって

くだらないと思いながら、

でも、私もイライラしてきて

いつも仲良しな委員会に

この空気がいやで、

私は逃げ出した

たまたま、音楽室があいていたので

気を沈めようと、ピアノを弾き始めた

たまたま頭に浮かんだ"エリーゼのために"を弾くと

少し心が楽になった

そして、

それから泣いた