拾 ページ10
「失礼する。
何をやってるのか知らないがもうそろそろ引き上げ…っ…お前…。」
なんでここにこの人がいるのかさっぱり検討がつかないが、あのフードの男の人が襖を開けて入ってきた。
私を呆然と見つめていた。
「…あ、私の顔か…、
さっさとつけなきゃ。」
紙を手に持って紐で頭に括り付けようとすると
「そんなことをしている時間はない。
…もうすぐここの主が来る。」
「知ってるの？」
「いや、変なことを起こしそうで気がかりでね。
…後を着いてきただけだ。
先程のあの桃色の衣を着た審神者がここの主なのだろう？
ここに向かっていたぞ。」
気づかれる前に早く退散しろ。と言わんばかりの口調だ。
ばれれば大変な騒ぎになる。
「わかった。」
フードの男はふと隅にいた山姥切を見ると顔をしかめたのがわかった。
「ふん。せいぜい頑張るんだな。
…さて、行こうか。」
「えっ…ちょ、ちょっと！？」
かなり偉そうな態度で何様のつもりだと聞きたかったが、私にかける声は先ほどの声色と打って変わって優しい声だったので拍子抜けてしまう。
加州やら堀川やらの声が聞こえたが、答える間もなくそのまま腕を引かれ連行された。
彼はなんとなく察してくれたのかさりげなく彼の身体で私の顔が他の人に見えないようにしてくれた。
＿＿人通りのないいつもの場所まで連れていくと、大丈夫の心配なんて最初から何一つなくただ怒られる。
「＿お前は一体何がやりたいんだ。」
彼の言うことはもっともだった。
自分の刀ならまだしも彼らは人の刀、私のような輩があの中に入ってはならない。
「…長話は禁物だ。上に見つかり次第問題になる。それを知らないわけがないだろう。」
そう、その通りだ。
大問題になる。
「…大丈夫。
政府に話はつけてるし、…だいたいあの人達、諦めてるから。」
「…？」
「この際洗いざらい話すわね。貴方なら黙っててくれそうだし、話して困ることはなさそうだもの。
＿私、少し前に酷い大問題を起こしたの。
だから政府の人はそれの対処、まあ…簡単に言うと殺しにかかってきたんだけど…
結局諦めたみたいでその後どういう風の吹きまわしなのか、私に向かって審神者にならないかって言ってきたの。」
「…一体どんな不始末をやったんだ。」
「政府の超有力政治家で政府に多額の資金援助をしている男の可愛い一人娘を殴り飛ばして縄で縛っちゃいました。…えへへ」
「……。」
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
