弐拾肆 ページ40
真夜中＿誰もいない演練場にこっそり入る。
本当なら政府が手配した必要最低限の日用品が置いてあるあの監視された部屋で仮眠をとるのが私の日課となっていたが…、
今日は全くそういう気分になれないので外に出かけることにした。＿とはいえ、一度も行ったことのない街に思い入れがあるわけもなく、結局はここになったのだ。
真っ黒のネグリジェは私が動く度にその足元まであるひらひらしたものをなびかせる。
忍び込む人間の格好にしてはあまにも無防備だろう。
別に悪さをしに来たわけじゃないのだから大目に見てくれることを信じて奥に突き進む。
「…はあ。」
あの階のあの廊下に辿り着いて、傍にあるベンチに背中を丸めて座り込んだ。
昼……あの3人の刀剣男士と別れて
政府の人からうけたものが、今の受付員の職を解雇だなんて思ってもみなかった。
ー
ーー
私は彼らが言い切る前に呆気に取られて目を見張った。
彼らはそんな私に目もくれず文字盤に書かれたことをそのまま読みあげる。
「＿これを以て、審神者の見習いに任ずる。」
私が困惑しているのに、彼らは私が次にやるべき事をぺらぺらと薄っぺらな言葉で話し続ける。
頭に入っても、それはなかなか定着してくれない。
「＿以上だ。」
ーー
ー
「……嫌だって言ったのに」
あいつらは私の意志を尊重するつもりは微塵もないのだ。
そのあと抗議しても全く聞き入れなかったのだから…
こんなことになった原因はまあ、多々あるのでそう強く言えない。
「…」
解雇になった理由を自分なりに考えるとやはりいくつもある。
見習いの審神者にさせる理由はさっぱり分からないが、これも彼らの駒である以上…無力な私は掌の上で踊るしかない。
ひんやりした空気が身にしみるのだった。
「＿お久しぶりです。蘇芳様」
蘇芳だなんてその名を使うのは＿彼しかいない。
「……こんのすけちゃん？」
声のする暗闇に目を凝らせば、月明かりに照らされて黄色い狐がこちらにとことこやって来ていた。
「なんでここに…」
「やはりここにいらっしゃいましたか…。」
顔色1つ変えずにそんなことを彼は言う。
「貴方…、あの本丸の補佐役じゃなかったの？」
審神者のサポートをする以上、こんな所で油を売っている場合じゃないだろう。
彼らが多忙なのはあの本丸で知っているから、首を傾げてしまう。
こんな所にいるだなんて彼の身に何かあったのだろうか。
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
