肆 ページ4
「色々大変なのね。」
本当にこの人は暇人だったのか…。
とはいえ、わかった所で感動も何もないので薄っぺらい言葉で返す。
「…なぜ顔を隠す？」
「貴方こそどうして顔を隠すの？」
「…なぜいつもここで彼らの戦いを見る？」
「私も貴方に聞きたいわ。」
ここに来るのはただの趣味だ。暇だからだ。
かと言って見ず知らずの人にそう安安と教えたくはないし、こんな偉そうな奴に聞かれるのは好きじゃない。
彼は深くため息を吐く。
「…質問を質問で返すな。」
「私のことなんてどうでもいいじゃない。ただの物好きなしがない受付員だとでも認識すればいいの。
ほらこの紙にもモブって書いているでしょう？」
私は彼に顔を近づけて私の顔の前に垂れ下がる紙を指さす。
そこにはちゃんとモブと書いていて丸でその文字を囲んでいるだろう。…こっちからはみえないが。
「…もぶ、とは？」
「解説しましょうか？
モブの語源は英語のmob。知ってる？これは群衆という意味なの。そこから物語でいう名前すら名乗っていない、しかも一瞬しか出てこない人達(群衆)のことを指すようになったらしいの。
つまり名前すらわからないまま、いつか皆から忘れそうなどこにでもいそうなもの……私みたいな奴を指すってわけ」
「…自虐か。」
「自虐も何も…人は皆、そういうものでしょ。どんな人も幾千もの日が経てばすっかり忘れさられる。」
彼はその後何も答えなかった。
「…じゃあ、私はこれで」
もう他に話すことはないので、さっさと飲み物を買いに行った。
「はい、あげる。」
「…何のつもりだ。」
私が自分の分とついでに彼の分まで買ってくれば、怪しがられた。
…あんな風にあしらったのだから頭のどこかで彼は飽きてどっかに行ってるに決まってると思いつつ
でも、
もしかしたらと思って二人分の飲み物を買ってきたのだが…本当にいたとは。
「お近づきのしるし」
ニタリと笑うが彼は無表情のままだった。
「…意味がわからない。」
粘り強く彼に押し付けるがそれでも受け取るつもりはないらしい。
「折角買ってきたんだから受け取って」
「…。」
それでも彼は頑なに受け取ろうとしなかった。
「受け取らないなら貴方の口の中にコレごと押し込むわよ。」
半分冗談のつもりで言ったが効果てきめんで渋々受け取ってくれた。
私は一息ついてストローを口にする。
少し気になって一瞥すれば彼はパッケージをじっと凝視している。
「何してるの？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
