第二幕 平穏な日々は続かない 拾弐 ページ28
「……。」
「大丈夫か？」
ずっと黙り込んでいると上の方から綺麗な男性の声が響いた。
ここ(演練場)の受付員として働いている私の唯一のお友達？(と断言は出来ないけど)であるフード男の長義くんだ！
ベンチに体育座りで蹲っている私にいつもの意地の悪い言葉もでないらしく普通に心配してきた。
もちろん、いつもの私ならば単純に喜ぶのだが……
今はそんな気分ではない。
「大丈夫じゃない…。」
「一体何があったのか、俺に教えてくれないかな。」
隣に腰掛けて私にそっと寄り添ってくれた。
いつもこんな感じだったらいいのに…！
「……色々とね、ストレスが…溜まっていくのよ。
最近の私を見たらわかるでしょ？」
次に私が何を言うのか察したようで、1つため息をつかれた。
「……"好かれる"自慢話なら俺は聞か＿」
「つーかーまーえーたっ♪」
長義の声を遮って誰かが私と長義の間に割り込んできた。
「ぎゃぁあ！？」
女に相応しくない声を上げるが、仕方ないのだ。
体育座りの私に力強く抱きついてくる人いや"刀"がいるのだから。
「あーもう、可愛い！好き！愛してる！」
私のあの声を聞いても可愛いという彼はもう耳鼻科に行かなければならないだろう。
「清光！走ったら駄目だろ？」
「いや、走るも何もここは関係者以外立ち入り禁止なんですが？」
ちゃんとその注意書きの札、貼ってたよね？
後ろの方から私にべったり抱きつく、清光こと＿加州清光のご親友、大和守安定が歩きながらやってきた。
「えーだって一秒でも早く会いたかったんだからいいでしょ、ね ？」
可愛く、こてんとされても……返答に困った。
加州は何をしても可愛いから、本当に困る。
「俺に会いたかったよね？」
ついつい、うんと言ってしまいそうな甘い吐息に息を呑む。
……日毎にスキルでも上げているのか？
加州が私の前に現れる度に上がっていくその力にそこまで考えてしまう。
「はいはい、とにかくさっさと離れよーか。清光のせいで困ってるでしょ。」
「うわっ！？安定、何するんだよ！」
安定が彼の首根っこを掴んで私と引き離してくれた。
ありがとう、大和守！
「隣空いたから座ってもいいよね？」
私の返答も聞かずにそのまま彼は座ってなぜか私の手を握ってきた。
ん？あれ？
……これって加州と同じパターン！？
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
