短 ページ27
白い衣
「へぇー。それでその収穫はあったの？」
「ああ。」
彼はたんたんとした口調で言った。
「え……。驚かした覚えはないわよ？」
「そうか？俺は十分に驚いたが」
(I・TSU・DA…！？)
謎の記憶喪失になったのかと思考回路をぐるぐるまわしていると、鶴丸がぽんぽんと頭を撫でる。
「そう硬い顔をするな。折角の可愛い顔が台無しだぜ？」
「…。」
イケメンにそう言われると謎の虚しさが込み上げてくる。
「お世辞はいいわ。」
「全く君は…、いい加減素直に喜んだらどうだい？」
散々可愛いだの美人だの言ってきたこの刀だが、ここまで私がずっと否定的なことをいうとくるものがあるのだろう。
なぜか怒られた。
「女の子にちやほやされてそうな顔の人に言われると説得力がないの。」
と言えば、顔か！？と彼は声を上げた。
「いくらなんでも俺の顔はどうにもできな…っ！なるほど、今度からは被り物をするというのはどうだろう！」
また何か思いついたようで、隣の手振り素振りがなんだか鬱陶しく思えてくる。
目がいつも以上に輝いていた。
嫌味で言ったはずなのになぜか怒ろうともしない。
「本当凄いわ…。」
ある意味、 感心してしまった。
「ん、……どうして止まるんだ？」
「着いたわよ。」
「おっ！？あっという間だったな…こりゃ、驚いた。」
「じゃあ、私はこれで試合頑張って。」
「君に言われると勝たないわけにはいかないな！」
そう言って、にっと笑うと奥の方まで進んで行った。
「随分、彼と仲がいいみたいだな。」
「うわっ！……幽霊みたいに出てこないでよ。」
突然、私の隣に現れるので数歩退いてしまう。
「……幽霊も何も俺はずっと＿いや、なんでもない。」
「……可笑しいわね。」
もし、彼が少し前からそばにいたのならば私が気づかないはずがない。
そういう感覚は前の職業のせいもあって誰よりも鋭いはずだ。
もともとそういう直感が強くてあの世界で今まで生き残れたのに……、
もしかして、私……最近たるんできているのかな？
「…何がかな？」
「んー、内緒。」
でも、今となってはもはや使うこともないし必要ない。
正直なところ周りの気配を察知しにくくなったというだけだ。
はっきり言ってどうでもいい。
「それで私に何か用でもあっ＿」
「…＿＿」
「……っ。」
だから、気づかなかった。近くで私達を白い格好の男が聞いていただなんて…。
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
