短 ページ26
白い衣
その時ちょうどフードの男が現れた。
「…ちょ、長義？」
「なっ……すぐ離れなくともいいじゃないか。」
この体勢を見られるのは恥ずかしいので、急いで離れた。
「…いい加減にしないと色々な意味で訴えるわよ。」
私がそう言っても効果ないが、鶴丸は場の空気を読んだのか渋々引いてくれた。
ふと、鶴丸が長義を見るとすぐさま真剣な顔になった。
「おや？……君は、あの時の…」
「……。一体なんのことだ」
「知り合い…？」
＿鶴丸に聞けば、笑って答えてくれた。
「知り合いかと思ったが違ったみたいだ。
そこの君、すまなかった。」
鶴丸はそう言って謝れば長義は謝られるほど大したことじゃないと言う。
こういう立ち位置で、長義を見たことがなかったから今思うのだが……
長義ってこんな性格だったのか。
私の前だと毒舌に毒舌で毒舌しか吐かないから、なんだか新鮮な気持ちだ。
「鶴丸国永、だったか？もうそろそろ下に行った方がいい。君を探す刀がいた。」
「！…そうか。」
彼が別れの言葉を言って去ったかと思えば
すぐに戻ってきた。
苦笑いで
「………まさか。」
「いや〜〜、助かった。」
「私からの最後の優しさと思え。」
彼ら(刀剣男士)のいるエリアに向かって歩いていた。
やはり道が分からなかったらしい。
「そんなに恨むことか？」
「当たり前よ。
この前は貴方達の安否を確認したかったから降りたけど…、
一体なんのためにこんな格好して、口調も性格も化けて、午前の担当を今まで他の誰にも譲らなかったと…」
愚痴を吐ききるまえに口が止まった。
「"主"と会わないため、か？」
「…そんな所。
こういうことは誰にも言わないようにしてたのに…つい零れちゃったわ。
別にこの仕事嫌いってわけじゃないのよ？」
歩きだせば、彼は私の隣を歩いてくれた。
「言わなくとも、君の様子を見れば分かる。
それでさっきのことは…俺にしか話してないってことかい？」
「そうだけど？」
「はは、そう言ってくれると嬉しいもんだな。」
いきなり笑った彼を怪しげに見る。
「嬉しいことって、…時々変なこと言うわね。 」
「そうかい？」
「ええ、あとなんで今日貴方がそんなに喜んでいるのかよく分からないわ。」
笑顔なのはいい事だがずっとにやにやしていてどうしたと思ってしまう。
「いつも言っているだろう。
人生には驚きが必要だ。俺は君という驚きを得るために、はるばる君の元までやってきたんだぜ？」
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
