短その三 ページ20
予想外れ (山姥切長義)
「長義くん、長義くん。」
私はフード男こと、長義くんに話しかけた。
「…気持ち悪いな。」
相変わらずのドS発言である。
だが、ここまでくるともう慣れっこだ。
「もうっ…私が附子なのは分かってるからストレートに言わないで」
「そういう意味ではないのだが……はあ。」
「いやなんで溜息をつくのよ！？」
「さて、俺を長義くん呼ばわりとは……一体何があったのかな？」
「さらっと無視ですかっ！？」
「無視はしてないよ。」
こんな感じに毎度私を振り回す彼だが、なんだかんだ言って悪い人じゃない。
そう、彼は悪い人じゃない。
だからこそ生まれたこの問題に私は問い詰めなければならない。
「貴方どうして私を"お前"呼ばわりするのよ。」
特定の人を君かそれともお前と呼ぶのか…ただそれだけの問題だが…。
気づいてしまった以上、私は黙っておくつもりはない。
「それは名乗らないからだろう。」
たんたんと告げられた答えにうんとうなづいてしまう。
「うんうん…ってそうじゃなくて！
他の子達には君って言ってるのに私はお前呼ばわりなのってことを聞きたいの。」
「ん？どういうことかな？」
きょとんとした顔で私を見る。
くっ、この男とぼけるつもりか！と、私はますますやる気になって彼に言い放った。
「数日前、下の階で私の同僚とぶつかったでしょ！」
「ぶつかった…。
ああ、あのことか。」
事の発端は数日前のことだ。
私はふと、仕事中に彼と同僚がぶつかったのを発見してしまった。
そもそも彼が仕事場(演練場)に居合わせるのは滅多にないというか＿ハッキリいえば全く会わないのだけど、そんな彼をいとも簡単に偶然見つけてしまったわけだ。
ぶつかったせいで、彼女(女性)は床に膝をつくことになるのだけど、まあお察しの通りこちらの長義くんは彼女を抱きとめたのだ。
"ぶつかってすまない。君、怪我は？大丈夫かな？"
そんな歯が浮くようなキザな台詞を簡単に言いのけて、彼女に優しく微笑んだ。
私はその時、気づいたのだ！
「確かにあの女性を俺は君と言ったが…、
それが何か問題でもあったかな？」
平然とした様子で彼は言った。
「いや、貴方がここで意識して区別していると言うなら私の中である仮説が成立するのよ。」
「ほう。」
「でも、……。いえ、今ので何となく分かったわ。やはり私の直感は当たってたのね。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
