短 ページ19
本物と偽物
「あっぷる、 あー、でり…しあす？」
私の言っていた英語を理解しようと思ったのか、私の発音の真似をし始めた。
「わかんなくても大丈夫！恥ずかしいこと言ってるからやめて！
知ろうとしないで！！どうでもいいこと言ってるから！」
自分で言っててアレだが、りんごは美味しいですってなんだよ。
自分で言ってて意味がわからない。どういう過程でそれが自分の名前(仮)になると思ったんだ。
林檎から名前を取ろうとした私が馬鹿だったのだ。
もう馬鹿！！
「って！結局あの戦いは！？
終わってた…。」
彼の隙をついて、見ればもう終わっていて別の戦いが始まっていた。
「……あのぐらい、俺でもできる。」
「え？……」
「…あと少し………もう少し経てば…。」
ぽつりと呟いていたその独り言はなんだか怖くて聞けない。
「…。」
「俺に何か言いたいことでも？」
「ううん、何も。」
目が合った瞬間、咄嗟に目を逸らして私は刀剣男士の戦いを見た。
「あ…。」
ふと、彼が目に入った＿
山姥切国広
先程の部隊の国広じゃないのだが、なんだが嫌でも目に入るのだ。
「彼が気になるのかな？」
そんなことはないと口を開く前に彼に先手を取られた。
「偽物君をまじまじと見る必要はないさ。そんなものを見る暇があるなら＿俺を見ろ。」
「は、…はいぃぃ？」
いきなりのナルシスト発言に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「あのねぇ、貴方を見る時間があるなら他に色々出来るじゃない。それにずっと見るだけなんて飽きる。」
「…そういう意味ではないんだが…、まあいい。
言っておくが俺は欲深い。
俺を"受け取る"のなら、くれぐれも浮気はしないで欲しいな。」
「はいはい……えっ！？！？」
ちょっと待て。
受け取る？
一体なんの話だ。
裏で滅茶苦茶なことになっている気がする。
……とても大変なことに。
「そもそも浮気って何！？」
「彼を見ていただろう？」
「それがなんで浮気になるのよ。」
聞いても彼は素直に答える気はないようだった。
「いい加減気づけ。これだから鈍感は困るな。…可愛げがあるかもしれないが。」
「かもしれないって何よ。」
せめてお世辞でいいから可愛いと言ってほしい。
言われる機会は滅多にないのだから。
「……先が思いやられる。」
「何の話？」
その後やはり彼はまたはぐらかした。
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作者名：沙恵燬 | 作成日時：2019年2月1日 1時
