番外編 ありのままの君。【煉獄杏寿郎】 ページ35
*
「転入生の煉獄杏寿郎くんです。皆、仲良くしてね」
小学校に入学して、でも二学期が始まる時に別の小学校へ転校した俺は中々、クラスに馴染めないでいた。その理由は頗る簡単で、この奇抜な髪色と大きくてギョロッとした瞳に、大きな声のせいだった。そうヒソヒソとした小さな声が皮肉にも俺の耳に掬われてしまったのだ。
毎日がつまらなかった。ずっと一人だったからだ。だが、まだ小さかった千寿郎の世話で忙しい母さんに不要な心配をかけまいと家では気丈に振る舞った。しかしまだ六つや七つの幼い心にはひとりぼっちというのは大いに傷となった。この強がりはそう長く続かないとも悟った。でもどうすることも出来ずにいた俺にその日は突然やってきたのだ。
「煉獄くんの鉛筆、鬼滅レンジャーだ!見せて!」
二つに結いた毛先はぴょんと跳ねていた。左膝には苺の絵が書かれた絆創膏を貼っているお転婆な姿のAが、目を輝かせて笑顔を浮かべながら俺をみていたのだ。
「うん」
「ありがとう!」
「みんな見て!煉獄くんのかっこいいよ!」と、君は大きな声でクラスメイトに向かって言った。その途端、一斉に俺に視線が集まる。息を呑んだ。どうせダメだ、と目をぎゅっと閉じた。
────本当だ!すっげぇ!どこで買ったの!
その言葉に、俺は恐る恐る目を開いた。周囲を見渡せば笑顔のクラスメイトたちが俺を囲んでいた。「いいな」、「かっこいい」、「俺も欲しい」、とたくさんの言葉が飛び交っていた。でも一番俺が泣きそうになった言葉はそのどれも違った。
────一緒に鬼滅レンジャーごっこしようぜ!
手を差し出してくれたクラスメイトの一人の言葉に、俺は感動したんだ。
「煉獄くん校庭行こう!私はA。よろしくね!」
それからの毎日は本当に楽しかった。みんなと沢山の時間を共有した。特に後々知ったことだが、Aとは家も隣だった影響でより仲良くなった。小学校が休みの土日も、千寿郎と三人で遊んだ。お気に入りだった家の近所にある中央公園や、小さな小川に、小さな駄菓子屋、季節のイベントは徐々に家族同士で交流するようにもなった。
日々の生活の中にAが必ずいる。そんな毎日だ、どれだけ幼いにしろ淡い恋心を持たない訳などなかった。ましてや俺を救ってくれた君だ。尚更だった。
けれど俺は学年が上がって中学生になってもAに好きだと伝えることはしなかった。何故だか俺自身も分からなかった。
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三月の専属ストーカーなつめみく - れんごくさんがむせるとよもっ、って可愛すぎて一人で悶絶するわ (10月25日 16時) (レス) @page3 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - ひよさん» ひよさん、またお会いできて本当に嬉しく思います、そしてコメントもありがとうございます(;_;)天元様と夢主のキラキラして輝く瞬間と2人の葛藤を書けていけたらな、と思っております。ゆっくりではありますがお付き合い頂けると嬉しいです!よろしくお願い致します! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 蓮さま、新作ありがとうございます!! 学校のアイドル、天元さまは似合いますね♡ 純な夢主ちゃんと天元さまの恋がどう進むのか楽しみです。更新はどうか、無理のないペースで!! (2022年4月29日 20時) (レス) @page7 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2022年4月24日 14時