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それから身体の力が急に抜けてそして抜けてしまったものを補うかのように俺は俺に声を掛けてきた名前も知らない先輩たちと関係を持ってしまった。
────どうでもいい、もうどうでもいい、と。
けれどこの行為は宇髄天元という一人の人間を否定するように感じたのだ。俺は派手だ。それは絶対的なことだ、異論は認めない。しかしそれは先輩たちと交わしてしまった行為とは全く違う意味を俺の中では成していたのだ。
派手は派手でも女関係が派手ということではない。自分が好きな自分を惜し気もなくド派手にさらす、ありのままの自分でいる。今の俺は俺が好きな俺ではない。
けれど今更こんなにも穢れてしまった俺を俺自身が好きでいられる訳がないし、ましてやこんな俺を純粋に好いてくれる存在がいるなど到底考えられない。
────天狗になってしまった罰が当たったのだ。
それならば俺は罪を償う必要がある。つまり俺は一生、顔も名前も忘れる彼女たちと何度も屈辱的な快楽を重ねていくしかないのだ。そんなことを考えながらも抵抗していた自分もはじめはいたが高校二年の冬を迎えた頃にはもはや諦めていて、もう本当にどうでもよかった。
「な、何だよ齋藤ちゃん」
────それなのに、君は。
「……ふふ。あー、なんか、その。宇髄くんって普通なんだなって」
────君は。
「は?」
────どうして君は
「友達はみーんな声を揃えて宇髄くん、宇髄くんってアイドルみたいだけどそんなことないんだね。地味で普通で。普通の人だ!なんか、それが知れて私すっごく嬉しい」
────俺がほしい言葉がわかるんだ。
「そう!そうなんだよ。俺は普通なの。実は地味なの。でもそれでいーんだよ、俺は。普通を送りてぇの!」
涙が溢れそうになるのを堪えて気丈に振る舞い笑って見せれば君も笑ってくれた。白と黒しかないそんな世界の道を俺は辿っていたのに急に突然にそれは色付いて。
そして君が手を差し伸べてくれた。でも俺はそれを握り返すってことは出来なかった。そんな俺をみた君はその小さな手で俺の手をとったのだ。力強く頼もしいありのままの君の笑顔に俺は恋をしたのだ。そして君と一緒に恋がしたいと切望したのだ。
「────俺はAちゃんが好きです。俺はAちゃんと恋がしたい。俺の彼女になって下さい」
だから俺はありのままの君を、ありのままの俺で。
────Aが大好きだ。
fin.
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三月の専属ストーカーなつめみく - れんごくさんがむせるとよもっ、って可愛すぎて一人で悶絶するわ (10月25日 16時) (レス) @page3 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - ひよさん» ひよさん、またお会いできて本当に嬉しく思います、そしてコメントもありがとうございます(;_;)天元様と夢主のキラキラして輝く瞬間と2人の葛藤を書けていけたらな、と思っております。ゆっくりではありますがお付き合い頂けると嬉しいです!よろしくお願い致します! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 蓮さま、新作ありがとうございます!! 学校のアイドル、天元さまは似合いますね♡ 純な夢主ちゃんと天元さまの恋がどう進むのか楽しみです。更新はどうか、無理のないペースで!! (2022年4月29日 20時) (レス) @page7 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2022年4月24日 14時