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興奮気味の友達二人の鼻息は過去最高で荒かった。当の私は、今にでも心臓が口から出て来そうだった。逆に出て来ていないのが不思議だった。
「A、しっかり伝えて来てね」
「うん。頑張る」
「よし、その調子!いってらっしゃい、A!」
力強い二人の笑顔に背中を押された私は、いってきますと彼女たちと同じように力強く笑って教室を出た。
放課後を迎えた廊下には、恋に心を奪われた多くの生徒たちが溢れていた。そしてそこには必ず儚くも実に残酷で美しい想いが付随していた。窓からちらっと見えた空はどんよりとしていた。
C組の教室に到着し、中を覗くが天元くんの姿はなかった。どこに行ったんだろう、とキョロキョロしていれば「お前ェ」と声がした。
「……宇髄ィ?」
「えっと、……そう、です」
「あいつ今日鍵開けだから、体育館行ったけど」
「あ、そうなんだ。ありがとう」
「別にィ。あー、たぶんあいつ今、めちゃくちゃニヤけてると思うぜェ」
クツクツ、と喉を震わす彼は恐らく、不死川実弥くんだ。「頑張れよォ」と手をヒラヒラさせた彼は、教室の奥に消えた。凄く恥ずかしくなったが、彼のエールも無駄には出来ない。精一杯、伝えて不死川くんにも良い報告が出来るようにしなければならない。
体育館へ足を運ぶ。今にも雨が降り出しそうだ。足音よりも心音が勝っていて、寒さによる震えなのか緊張によるものなのか、もうどっちでもいい。何でもいい。何でもいいから、早く、早く天元くんに会いたい。私は走り出した。そして体育館の入り口の扉に手をかけて大きく引いた。
────目を疑った。
広い体育館の中央。そこには以前、天元くんに言い寄っていたあの先輩と天元くんがいたのだ。そして二人の唇が重なっているように私には見えてしまった。
「何あんた?あ、前にも盗み聞きしてた子でしょ。悪趣味すぎる。てか、あんたでしょ?宇髄くんに纏わりついてるっての。やめてくれる?迷惑なのよ!」
私に気付いた先輩は、嫉妬からなのかいくつもの罵詈雑言を並べた。天元くんは目を大きく開いて、「誤解だ、ごめん」と叫んだ。私はまた逃げ出してしまった。その瞬間、雨が降り出した。
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三月の専属ストーカーなつめみく - れんごくさんがむせるとよもっ、って可愛すぎて一人で悶絶するわ (10月25日 16時) (レス) @page3 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - ひよさん» ひよさん、またお会いできて本当に嬉しく思います、そしてコメントもありがとうございます(;_;)天元様と夢主のキラキラして輝く瞬間と2人の葛藤を書けていけたらな、と思っております。ゆっくりではありますがお付き合い頂けると嬉しいです!よろしくお願い致します! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 蓮さま、新作ありがとうございます!! 学校のアイドル、天元さまは似合いますね♡ 純な夢主ちゃんと天元さまの恋がどう進むのか楽しみです。更新はどうか、無理のないペースで!! (2022年4月29日 20時) (レス) @page7 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2022年4月24日 14時