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*
「うっま」
「美味しい」
「一口ちょーだい」
「どうぞ」
クレープ屋さんのイートインスペースに二人で並んだ。宇髄くんは私に訊くとわざと私が口をつけたところから食べた。ニヤリと笑って「お裾分け」って私の前に自身のクレープを出した。
勇気を出して宇髄くんが食べたクレープを口にした。美味しい、と恥ずかしくて俯けば嬉しそうな、ありがとうが聞こえた。
「今日さ」
「うん」
「夜、電話していい?」
「数IIの課題やらね?」と宇髄くんは目を逸らしたがすぐに私の目を見た。真剣で少し強気な眼差しが心地良く思うぐらいには落ちていた。俯きながら小さく頷けば、「ありがとな」っていつものように大きな手で頭を撫でてくれた。
「ん」と今度は堂々と手を差し出す宇髄くん。それは電車に揺られている間もしっかりと繋がれていた。私の最寄りまで送ってくれたし、「夜な」と悪戯っぽく笑ってくれた。
帰宅してすぐに私はお風呂に入った。湯煙が私自身の何かと鏡を包む。淡い幕が張る鏡に指を宇髄天元と滑らした。私は慌てて、うわあ、と声を上げながら鏡を撫でて宇髄くんの名前を消した。その行為は私の想いをさらに確実なものにしていた。
早まる律動を抑えながら私は念入りに身体を洗った。別にただ電話をするだけで何をそんなにも気合を入れているのか。最近、流行しているスクラブをしてお風呂から上がってからも好きなヘアトリートメントをつけて。パックまでしちゃって。
落ち着かないけれどこの浮遊感に埋もれて胸が躍る。はやく宇髄くんと電話したい。最初の入りはもしもし、がいいかな。それともこんばんは、がいいのかな。おつかれさまの方が可愛いのかな。
今か今かと時計を何度も繰り返し見ても約束の時間はまだ先だった。実際に彼と電話を始めたら私はどうなってしまうんだろう。きっと心臓は止まってしまうんだろうな。声は裏返ってまともに話せなくなっちゃいそうだ。それでもこんなにも楽しみで仕方がないのはそれぐらい宇髄くんのことが大好きで堪らなくて彼に恋をしているってことなのだ。
こんな日が私にも来るなんて思いもしなかった。でもこの記念すべき日の相手が宇髄くんで本当によかった。彼と同じ気持ちかどうかは分からない。こう思っているのは私だけかもしれない。彼の大切な人にならなくていい、なんて口が裂けても言えないけれど、彼を好きなって後悔はない。
────初恋が彼で本当に嬉しい。
ただそれだけなのだ。
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三月の専属ストーカーなつめみく - れんごくさんがむせるとよもっ、って可愛すぎて一人で悶絶するわ (10月25日 16時) (レス) @page3 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - ひよさん» ひよさん、またお会いできて本当に嬉しく思います、そしてコメントもありがとうございます(;_;)天元様と夢主のキラキラして輝く瞬間と2人の葛藤を書けていけたらな、と思っております。ゆっくりではありますがお付き合い頂けると嬉しいです!よろしくお願い致します! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 蓮さま、新作ありがとうございます!! 学校のアイドル、天元さまは似合いますね♡ 純な夢主ちゃんと天元さまの恋がどう進むのか楽しみです。更新はどうか、無理のないペースで!! (2022年4月29日 20時) (レス) @page7 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2022年4月24日 14時