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「……この間は、なんかごめんな。俺のせいで齋藤ちゃんが睨まれちゃったよな」
「ごめん」と宇髄くんはわざわざ立ち上がり、頭を下げた。突然のことに私は驚いてしまって、顔を上げてほしい、としか言えなかった。
申し訳なさそうに頭を上げた宇髄くんは、椅子に座り俯いてしまった。普段の彼からは到底想像出来ない姿に私は言葉が出なかった。
「……なーんかさ、俺ってめちゃくちゃイケてるだろ?」
「は、はい……?」
「だからかしんねーけど高校入ってからちょいちょい女の先輩たちに目付けられちゃって。そしたら毎回毎回、天元上手いでしょ?なんて言ってくるわけ。参っちゃうよなぁ……俺のことそういう目でしか見てないってことじゃん?幻滅したんだよな。別に興味がないとかそういう訳じゃねぇけど、俺にだって恋ぐらい普通にさせてくれよって思っちゃったんだよなあ」
悲痛な胸の内であるというのに、へらへらと気丈に振る舞うその横顔は見ていられないのだけど、でも何故かたった数ミリではあるが彼に近づいたような感覚に、不謹慎にも胸が躍った。
そして恐ろしいほどに私は笑いが込み上げてしまって、あろうことか宇髄くん本人を目の前にして大きく笑ってしまったのだ。理解が追いつかない彼は、キョトンとした表情で私を見つめていた。
「な、何だよ齋藤ちゃん」
「……ふふ。あー、なんか、その。宇髄くんって普通なんだなって」
「は?」
「友達はみーんな声を揃えて宇髄くん、宇髄くんってアイドルみたいだけどそんなことないんだね。地味で普通で。普通の人だ!なんか、それが知れて私すっごく嬉しい」
────本心だった。嬉しかった。
遠い存在。到底、手にする事は出来ない存在だと思っていた彼は、誰もが嫌だと毛嫌いするのに、誰もが欲しいと切望する、普通を望むただの地味な男の子だった。私と同じだった。
「笑っちゃってごめんなさい」
笑いすぎたせいで私の目からは涙が出ていた。何も言わずに私の話を聞いていた宇髄くんは、私の目を見て興奮したように笑った。
「そう!そうなんだよ。俺は普通なの。実は地味なの。でもそれでいーんだよ、俺は。普通を送りてぇの!」
「なんかすっきりした、ありがとう」と宇髄くんは私に右手を差し出した。何か、何か凝り固まったものが解れたように、屈託の無い笑みを宇髄くんは浮かべていた。
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三月の専属ストーカーなつめみく - れんごくさんがむせるとよもっ、って可愛すぎて一人で悶絶するわ (10月25日 16時) (レス) @page3 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - ひよさん» ひよさん、またお会いできて本当に嬉しく思います、そしてコメントもありがとうございます(;_;)天元様と夢主のキラキラして輝く瞬間と2人の葛藤を書けていけたらな、と思っております。ゆっくりではありますがお付き合い頂けると嬉しいです!よろしくお願い致します! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 1ceb99e799 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 蓮さま、新作ありがとうございます!! 学校のアイドル、天元さまは似合いますね♡ 純な夢主ちゃんと天元さまの恋がどう進むのか楽しみです。更新はどうか、無理のないペースで!! (2022年4月29日 20時) (レス) @page7 id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2022年4月24日 14時