第50話 ページ6
誰が言っていたのだか、忘却は救いだと。
“二人とも、私の自慢の妹と弟よ。”
ずっと一つのものを見続けると、それが一体何なのか分からなくなることがあるが、あたしの場合、それはないらしい。だって、
“Aちゃん、”
ずっとあの人だけを見続けているのだから。
バシャバシャ…ザ―
走って屯所に戻ると洗面所で顔を洗う。
「ッ……」
顔を上げると姉上によく似た自分の姿が鏡に映り、逃げるように自室に戻る。
旦那は好き。一緒に居ると温かくてすごく心地いい。
その反面。全部綺麗に浄化されて、忘れてしまいそうで怖かった。
旦那が笑う度に、土方さんを許してしまう。
あたしが笑う度に、姉上が許してくれているような気がしてしまう。
どんどん薄れて、嘘だったみたいに。全部忘れて幸せになってしまう。
「おい、Aー…」
後ろから声をかけられて、肩が跳ねる。
「ッ…びっくり、させないでよ」
振り向き、声の主を見つめる。
「特に気配消してた訳でもねーだろ。」
それは只あたしの注意力が散漫だった所為だろう。
「お前夕飯食ってねェんだって?一番隊
「今日は、いらない」
「…体調悪ィのか?」
「別に…お腹すいてないだけ」
そう言ってまた彼に背を向ける。
「…俺が出てる間に何かあったのかィ?」
心配そうに尋ねてくる声に何も返せなくて、黙ったままでいると、
「旦那に何か言われたとか。」
顔を上げれば、まっすぐにあたしの顔を見るそーちゃんと目が合う。
「さっき、旦那と会った」
「……そう、」
その視線に耐えられずに再び俯いていると、襖を閉めた彼が近寄ってきて、
「A、」
「な、に…」
「こっち向けよ」
いつもより幾分低い声で誘導され、躊躇いながらも顔を向き合わせると、堅い表情をした彼は黙って肩に腕を回してきて、
「ッ…んっ…そーちゃ、」
「黙ってろ」
重なる口唇
「んッ…ぅ」
深く、濃厚に、口づけられてぼうっとした意識の中
“幸せになってちょうだいね。”
最期に残した、姉上の言葉がよぎり、目の前が霞んだ。
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あつぽん(プロフ) - アルハさん» ありがとうございます！！！私としてもすごく思い入れのあるこの作品についてそういうコメントいただけるのはすごくうれしいです！これからもよろしくお願いしますね(*^_^*) (2016年12月7日 11時) (
レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 1から読みました！話に引き込まれていって凄く面白かったです!!最高!!! (2016年12月3日 14時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - みゅうさん» ありがとうございます！そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります！これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年8月25日 15時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - あつぽんさんの作品は全て読ませてもらっています！どれも面白くて大好きですっ！これからも頑張って下さいq(^-^q)応援しています(*´ω｀*) (2016年8月2日 19時) (レス) id: ad4e56f403 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 月夜さん» おおおお！総悟＆神威好きに出会えるとは！！わたしも大好きなので、喜びのあまりにやにやがとまりません(笑)実は私の作品、神威が活躍するの多いんですよ(笑)これからも楽しんでいただけると嬉しいです♪ (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あつぽん | 作成日時：2016年2月6日 10時
