第49話 ページ5
「あー…そーいや、挨拶もせずに引っ込んじまってすいやせんでした。
誰かさんに飲まされ過ぎて、介抱が大変だったんでねィ。もう、ピンピンしてまさァ。」
「ほー…ま、俺も今日あったばっかだから知ってンだけど、一応挨拶しとっこかなーみたいな。厳しいお兄さまに。」
「ま、旦那はAの数少ない屯所外の"友達"だから、俺も一応は信用してるんですぜ?わざわざ挨拶に来てくれるたァ、ありがたてェや。」
「そんな信用されちゃってもなァ…俺はAと友達以上になりたいんだけどねー。」
「へぇ…旦那とアイツ、そんなに仲良かったんですかィ?意外でしたからねィ、まさかアイツが旦那と二人っきりで飲んでるたァ」
「そりゃ驚かせたなら悪かったな、前から結構一緒にいたんだけどね。要するに前から俺とAが普通に絡んでたのを沖田君が知らなかっただけじゃねーの」
……一々ムカつく言い方をする男だな本当。
日も落ちて雨足が強くなる中、淡々と言い合う俺達を通行人が訝し気に見ては過ぎていく。
「ていうか意外だったのはこっちの方だけどね、まさか沖田君が酔っぱらった妹に手ェ出すなんて。」
そんな早いテンポの会話の中、不意に投げられた言葉に対して一瞬グッと言葉に詰まってしまった俺に旦那はさらに攻撃を仕掛けてきた
「一体、どういうつもり?」
どういうつもり、だって?
アンタに何が分かる。
俺達は二人で一つなんだ。
ずっと近くに居たのに
ずっと近くに居たいだけなのに
兄と妹 男と女
何の差がある?
どうして、求めることが許されない…?
誰を憎めばいいか、何を憎めばいいか、もうわからない
いくらアンタがアイツを好きでも、俺とAがどうしようが関係無いじゃねェですか
…ハッキリ旦那には関係無ェって言っちまおうか、なんて思っていたら、
「俺、Aのことが好きだから、」
続けられた台詞は以前聞いたものと同じなのに。
「一応、お兄様に言っておいた方がいいのかと思って。」
「ッ………」
言葉が出ない。
強くなる雨音にもかき消されない、強い声色。
「じゃあ、また、」
旦那は通りを歩いて行ったが、俺はその場で立ち尽くすばかりだった。
脳裏に映る紅い瞳。
確かに俺はあの瞳に射貫かれた。
そしてふいに思い出した、昔の記憶が頭をかすめた。
"そーちゃん!"
ただお前だけがいればいい。
ただお前だけが隣にいてくれさえすれば、良かったのに。
いつから、
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あつぽん(プロフ) - アルハさん» ありがとうございます!!!私としてもすごく思い入れのあるこの作品についてそういうコメントいただけるのはすごくうれしいです!これからもよろしくお願いしますね(*^_^*) (2016年12月7日 11時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 1から読みました!話に引き込まれていって凄く面白かったです!!最高!!! (2016年12月3日 14時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - みゅうさん» ありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります!これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年8月25日 15時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - あつぽんさんの作品は全て読ませてもらっています!どれも面白くて大好きですっ!これからも頑張って下さいq(^-^q)応援しています(*´ω`*) (2016年8月2日 19時) (レス) id: ad4e56f403 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 月夜さん» おおおお!総悟&神威好きに出会えるとは!!わたしも大好きなので、喜びのあまりにやにやがとまりません(笑)実は私の作品、神威が活躍するの多いんですよ(笑)これからも楽しんでいただけると嬉しいです♪ (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あつぽん | 作成日時:2016年2月6日 10時