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第74話 ページ30

きっと、彼も未だ笑えないのだ。思い出して泣けないのだ。


自分は今までこの人の何を見てきたのだろう、と、Aはその時思った。

「旦那は…さ…、」

「……ん?」

聞いていいものか一瞬躊躇い、恐る恐る口を開く。

「旦那は、何を失くしたの?」

「…あー…そうだなあ、」

銀時は先程の凍りついたような表情を消して、Aを見た。


「…色々、だな…、沢山…」


そう言って笑った銀時を見た途端、Aの両目から涙が溢れてきた。

「ッ……」


だから、今の旦那がいるんだ。

言おうとしたその言葉は、言葉にならなかった。


「おい…大丈夫かー…?」


全てを諦めている様に見える彼は、同時に全て悟っている様にも見えた。


「ッ…ひっ、…っ…」

Aは彼の事を何一つ知らなかった。


「おいおい、急に泣くなよ」


「…泣けって、言ったの…ッ…旦那じゃん…ッ」


「……で…、思い出せた?」


Aは黙って首を横に振った。

泣けない銀時を想って泣いた。

それは自分の悲しみよりも苦しく、痛かった。



「ッ……ぅ…ひっく、…」


同じ想いを抱えながら、自分を励まそうとしてくれる彼を想うと、涙が止まらなかった。


「…………」


「…一緒に泣いてよ。姉上の為に…」


「……いーよ」


風に揺れる銀髪を見た。


「…すげェ、いい女だったな」


「あたしの姉上だもん…。」


「男見る目がねぇのが惜しかったな」



「うん……でも、あたしにも…遺伝したかも。」


「……はァ…!?え、…お前も…ひじ…」


「違うよ…、」


「え、」


「旦那だよ、」


顔を上げた銀時にAが笑う。


「あたしは、旦那が好き」


「……ッ…銀さんは…マダオとか言われてっけどいい男だぞー…」


「うん…知ってる。」


「……ッ、」


「温かくて、優しくて…大好き。」



「俺も好き。大好き。…めっちゃ好き…すげー…」


だんだん涙声になってきた銀時はおでこをAの肩に乗せた。



何が正しかったのかなんて分からないし、分かった所でやり直す事など出来ない。

けれど、感謝している。

姉上がくれたに等しい、現在に。

銀時の重みと温もりを肩に感じながら、Aは何時しか、姉の為だけに涙を流していた。

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あつぽん(プロフ) - アルハさん» ありがとうございます!!!私としてもすごく思い入れのあるこの作品についてそういうコメントいただけるのはすごくうれしいです!これからもよろしくお願いしますね(*^_^*) (2016年12月7日 11時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 1から読みました!話に引き込まれていって凄く面白かったです!!最高!!! (2016年12月3日 14時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - みゅうさん» ありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります!これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年8月25日 15時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - あつぽんさんの作品は全て読ませてもらっています!どれも面白くて大好きですっ!これからも頑張って下さいq(^-^q)応援しています(*´ω`*) (2016年8月2日 19時) (レス) id: ad4e56f403 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 月夜さん» おおおお!総悟&神威好きに出会えるとは!!わたしも大好きなので、喜びのあまりにやにやがとまりません(笑)実は私の作品、神威が活躍するの多いんですよ(笑)これからも楽しんでいただけると嬉しいです♪ (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あつぽん | 作成日時:2016年2月6日 10時

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