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第71話 ページ27

「A、」

縁側に座っていたAに声を掛ける。


「おい…、A」

「…………」

が、返事がない。


「……」


聞こえる距離にいるのにどこか虚ろな瞳で庭を眺めている。

「A…!」


もう一度声を掛けて、肩を掴んだ。


「うわ!銀ちゃん!いきなりびっくりしたー」


「いきなりって…ずっと声掛けてたぞ。お前大丈夫か?」


「へっ?…えっ、ごめんね。」

「A…」


顔色が悪い。


「来てくれたんだね…嬉しい」


その表情は寂しげで。


「来るに決まってんだろ。約束してたし、年甲斐もなくすげえ楽しみにしてただからな?」


「昨日の見られて嫌われたかと思ったから。」


風に消されてしまいそうなほどの小さな薄声で呟いたA。


「嫌う…?何でだよ…」


暫しの沈黙の後、


「綺麗じゃないから。」


「…………」

「わたしは人を殺して生きてる。死にたくないから、生きたいから斬るの。」


彼女が庭を眺めながら、はっきりした声色で話すのを、俺は黙って聞いている。


「あたしの剣は、真選組を守り、近藤さんを守り、…そーちゃんと共に歩くためにあるから。」


「…………」

「結局全部自分のためだってわかってる」


「…………」


「だけど、やめられないから。」


Aが話終わると、ほおっと息を吐いて彼女の隣に座り、自分も庭を眺めて口を開く。


「いいじゃん…それで。」


「え…、」


「Aはすげえ綺麗で真っ直ぐだよ。」


そう言って隣を見ると、驚いて顔を上げたAと目が合う。


「…少なくとも、俺には…そうみえるけど?」


季節外れに庭に咲いた一輪の真白の花。


「俺さ、お前よりもすげえ年上なのよ。」

「……」

「ロリコンって言われても文句言えねえくらいには、年上。」

その花に視線を落とすと、ポツリポツリと続ける。


「汚ェモンも綺麗なモンも、色んなモン見てきて。

人生の酸いも甘いも、噛み分けてきてんだ。」


「ッ………、」


「だから、わかるよ。お前はすげえ綺麗だってことも、」


庭の花から目を逸らさずに話続ける。


「――お前が自分を許せねえ理由が、さっき言ってたことだけじゃねえってことも。」


そう言って隣を見ると、


「ッ……」

「わかるよ、好きな奴のことくらい。」

今度は大きな瞳を涙でいっぱいにして、それでも泣かないように上を向くAの姿。


「少し歩くか…?」

小さく頷いたAの手を掴むと、銀時は屯所の外に出た。

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あつぽん(プロフ) - アルハさん» ありがとうございます!!!私としてもすごく思い入れのあるこの作品についてそういうコメントいただけるのはすごくうれしいです!これからもよろしくお願いしますね(*^_^*) (2016年12月7日 11時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 1から読みました!話に引き込まれていって凄く面白かったです!!最高!!! (2016年12月3日 14時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - みゅうさん» ありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて本当に嬉しいです。励みになります!これからも頑張りますので、どうぞ応援よろしくお願いいたします (2016年8月25日 15時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - あつぽんさんの作品は全て読ませてもらっています!どれも面白くて大好きですっ!これからも頑張って下さいq(^-^q)応援しています(*´ω`*) (2016年8月2日 19時) (レス) id: ad4e56f403 (このIDを非表示/違反報告)
あつぽん(プロフ) - 月夜さん» おおおお!総悟&神威好きに出会えるとは!!わたしも大好きなので、喜びのあまりにやにやがとまりません(笑)実は私の作品、神威が活躍するの多いんですよ(笑)これからも楽しんでいただけると嬉しいです♪ (2016年7月4日 21時) (レス) id: 3134e8bca3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あつぽん | 作成日時:2016年2月6日 10時

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