036号室 (GEN side) ページ37
-
Aの部屋のドアの前でスマホをいじりながら待つ。
……が、人を待つのってこんなにドキドキするもんだったっけ、なんて考えてしまって画面にうつる文字なんてまったく頭に入ってこない。
その隙を狙ったや否か、するりと気持ちのいい風が首筋を触って通り過ぎていく。
「もしもし？なに？」
あ、Aの声。
電話がかかってきたのか、このタイミングで。と思っているとドアがガチャリと開いた。
「いや帰らんよ。……なんでって、別にもう誕生日祝ってもらうような歳ちゃうから」
右耳にスマホを当てながら、そして少し笑いながら出てきた彼女は淡いチェックのシャツをふわりと風になびかせて。
「ああそうそう。一日だけな。なんやしらんけど前日に連絡来てん」
そして、会話の合間に(ごめんね)なんて、可愛く口パクで言ってきたもんだから。
「ああそうなん。よかったやん。……うん」
「……、」
……なんかもう、たまんないんだけど。
なんて、ニヤけてしまうのを右手で口をおおって抑えるので、精一杯。
割と親しい相手なのか、あまり俺と話す時は聞くことができない関西弁を間近で聞くことが出来ているのも、なんだか嬉しい。
「いやだから帰らんって。ん、気持ちだけ受け取っとくわ。ありがとう」
Aは慣れた手つきで鍵をかけ、
「ちょ、今から出かけるから。また電話する」
と簡素に向こうの相手に伝えて、即座に電話を切った。
「すみません、お待たせしました。母からちょーど電話がかかってきちゃって」
「……だからナチュラルに関西弁だったんだ」
「いやなんですか、ナチュラルに関西弁って」
そうやって笑ってくれるだけでももちろん嬉しいし可愛いんだけど、タメ語になって俺にだけ向けてくれる関西弁が聞けたらもっと嬉しいのになー。
なんて思ったけど、まあ多分無理だろうなと思って、口にはしなかった。
「てか誕生日なの？」
「はい。来週ですけど」
「の？」
「の？」
「来週の、いつ？」
「……いつやろう」
「え、ちょ、教えてよ」
「ナイショ」
「いやなんで！」
「ナイショはナイショです」
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 109人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
lemon(プロフ) - 初めまして！とても素敵な作品でとても続きが気になります！第2章のパスワード教えていただきたいです！ (5月7日 13時) (
レス) id: 1bc68c94aa (このIDを非表示/違反報告)
ちわわ - 初めまして！もうめちゃくちゃ刺さりました…大好きすぎる作品です…!第2章のパスワードを教えていただいてもよろしいですか…？ (2022年6月3日 2時) (レス) id: 8e9e78c35a (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - 初めまして！とても素敵な作品ですね！続きが気になります！第2章のパスワードを教えていただけますか？ (2021年3月26日 17時) (レス) id: ce4eaa6c55 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダマカロン(プロフ) - 第二章と片岡さんのお話のパスワードを教えてもらいたいです！ (2020年10月10日 2時) (レス) id: 41c2841ae6 (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - はじめまして！素敵な作品で一気読みしちゃいました(TT)第2章も他の作品も是非読みたいです！ (2020年3月6日 1時) (レス) id: 9a92e69ecf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヨムヨム | 作成日時：2019年9月11日 12時
