012号室 ページ13
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「……吉留さん、」
しゃがみこんで、より近くで名前を呼びかけてみる。
いや寝てるにしても、なぜこんなところで寝てしまうんだろう。
もう春先だからいいものの、もし冬だったらと考えると。
もしや鍵を失くした？
としても大家さんはこの時間なら下にいるからすぐに解決することができる。
「……吉留さん、起きてください。吉留さん、」
仕方がないからベシベシと腕を叩くようにすると、「ん……」とやっともぞりと反応を見せてくれて、ホッと息を吐く。
「15時ですよ。何時からこんなところで寝てるんですか」
「……わかんない、」
「体が悪くなりますよ。鍵は？ありますか？」
「……ない、って言ったらAちゃんち入れてくれんの？」
……なんで下の名前を、と思ったけど、まあおおよそ大家さんであろうとすぐに察しはついた。
「……入れるわけないじゃないですか」
「……嘘です、あります。あるからそんな怖い顔しないで」
「よろしい」
特に突然の名前呼びについては言及せず、私も彼と同じように壁に背をつけて座る。
「アリーナツアー、お疲れ様でした」
「……来てくんなかったね」
「……それはどうやろう」
「嘘つき」
「嘘つきって。私、別に行くとは行ってませんからね？」
「でも行きたいって、言ったじゃん」
ちょっと俺期待したのに、なんてまるで小さな子供が拗ねるように言うもんだから、おもわず吹き出し笑いをしてしまった。
笑わないでよと言われたので、立ち上がりながら平謝りをする。
ああよかった。
普通に笑えているし、話をすることが出来ている。
「次のYONFES来てよ」
「……フェス……、は、ちょっとハードル高いです」
「いや高くないじゃん。むしろ易しいでしょ」
いやなんか、と言葉を紡ごうとする私を吉留さんはじっと座ったまま見つめてくる。
その視線も、不思議と嫌じゃない。
むしろ、ああこれだ、と、久しぶりに心地良さを味わえて気持ちがいいような、そんな。
「……そういえば吉留さんとこうやってバンドの話するの、初めてですね」
「……そう？」
「だって私が1番好きなバンドとか知りませんよね？」
「……フォーリミじゃないの？」
「残念ながら」
「じゃあ聞かない」
なんなんですか、と私はまた、笑っていた。
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lemon(プロフ) - 初めまして！とても素敵な作品でとても続きが気になります！第2章のパスワード教えていただきたいです！ (5月7日 13時) (
レス) id: 1bc68c94aa (このIDを非表示/違反報告)
ちわわ - 初めまして！もうめちゃくちゃ刺さりました…大好きすぎる作品です…!第2章のパスワードを教えていただいてもよろしいですか…？ (2022年6月3日 2時) (レス) id: 8e9e78c35a (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - 初めまして！とても素敵な作品ですね！続きが気になります！第2章のパスワードを教えていただけますか？ (2021年3月26日 17時) (レス) id: ce4eaa6c55 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダマカロン(プロフ) - 第二章と片岡さんのお話のパスワードを教えてもらいたいです！ (2020年10月10日 2時) (レス) id: 41c2841ae6 (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - はじめまして！素敵な作品で一気読みしちゃいました(TT)第2章も他の作品も是非読みたいです！ (2020年3月6日 1時) (レス) id: 9a92e69ecf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヨムヨム | 作成日時：2019年9月11日 12時
