記憶 ページ5
凛月「Aのお母さんは必死にAを止めようとしてたけど、
泣き止まなくて。ずっと俺に抱きついて離れなかった。」
そんな記憶な…
…いや、あった。
そういえばあった…。
凛月「そしたらAがお母さんに、
『どうしたらりっちゃんとずっと一緒にいられる？』って聞いたんだ。
お母さんは、『結婚したら死ぬまで一緒にいられるよ。』って言ったの。
それで俺たちは、将来結婚しようって約束したんだよ。」
…全部思い出した…。
しかもそのプロポーズ的なことを言ったのは私からだ…。
恥ずかしい…。
凛月「Aには覚えててほしかった。
俺は何年経っても覚えてたんだから。
でも、あいつには両思いの好きな人がいて…。」
あんず「…そんな昔の約束…覚えてないんじゃ…。」
凛月「覚えてなくてもいい。
でも俺は、約束だけは死んでも守るから。」
…それってつまり…結婚するってこと？
あんず「それじゃあ凛月くんの好きな人はどうなるんですか…。」
凛月「…俺の好きな人は、
何年経ってもAだけだよ。」
…凛月。
凛月「出会ったときから、死ぬときまで、
ずっとあいつが好き。
今はもう叶わない恋かもしれないけど、
それでも俺はまだ、あいつが好き。」
凛月の本音を知って、嬉しい反面申し訳ないとも思う。
あんず「…そうですか…。」
凛月「…うん。」
あんず「…ごめんなさい。
しつこく聞いて。
私…Aさんが羨ましかったの。」
私が？
私はあんずさんのほうが羨ましいんだけど…。
凛月「？」
あんず「私、凛月くんの前に、衣更くんが好きだったんです。
でも、告白して
…好きな人がいると振られちゃって…。
それが凛月くんの許嫁だって知ったとき、本当にその人が羨ましかったんです。
凛月くんを好きになって、
凛月くんもAさんが好きだって知って、
私の好きな人ばかりに思われているAさんって、ずるいなって。」
あんずさんは涙を流していた。
あんず「…私は…沢山のことを頑張ってきました。
それなのに…良いことなんて起こらない。
プロデュースしたユニットがいい結果になっても…
私個人は何も報われなかった…。
恋愛だってなんだって、うまく行かないことばかり…。」
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