安心 ページ4
凛月「話って何？
俺、今からレッスンなんだけど。」
口調から捉えて、あの人今物凄い不機嫌だ。
何かあったのかな？
それにしても、あのあんずさんって人…。
可愛いな。
私が憧れる美人だ。
あんず「あのね、私…。
凛月くんが好きなの。」
うん、大体分かってた。
校舎裏に男女がふたりきりで何をするかって。
分かってたよ。
だって凛月はかっこいいし、
優しいし可愛いし、
惚れてしょうがない子だよ。
だからなのかな。
こんなに辛い。
今まで散々突き放しておいて今更何なの？って自分でも思う。
でも、今までの私に向けられた優しさが、
全部消えてなくなるのが嫌なの。
これからも、あぁしてほしいんだ。
もう叶わないかもしれないけど。
凛月「…ありがとう。」
凛月は彼女に近づく。
そう…なっちゃうの？
私にはもう飽きたよね。
私よりは、あんずさんのほうがいいに決まって…
凛月「…ごめん。」
…え？
どうして？
凛月「俺、あんたをそういうふうに見たことない。」
あんなに綺麗なのに…。
そんなこと思うけど、
心のなかでどこかホッとしている自分がいる。
あんず「…え？」
あんずさんも驚いてる。
そしてうつむいた。
凛月「それじゃ。」
凛月はあんずさんの横を通り過ぎる。
あんず「待ってください！」
凛月は立ち止まる。
凛月「何。」
あんず「…それは…許嫁さんがいるからですか？」
え？
どうしてあの人が知ってるの？
凛月「…そうだって言ったら？」
…そう…だったの？
あんず「…そんなのおかしいです…。」
凛月は…
私が許嫁だからあんなに告白してきたの？
私を好きになってくれたからじゃなかったの？
あんず「本当に好きな人と一緒になるべきです！
親の決めた相手となんて、いけません！」
凛月「…それで？
俺の本当に好きな人はあんたってこと？」
あんず「…それは…。」
駄目だ。頭が追いつかない。
凛月「…あれね、親の決めた相手じゃないの。
俺達が昔決めた相手なの。」
私達が…昔決めた？
いつ？
凛月「幼稚園を俺が卒園するとき、
あいつが泣いて俺のところに来てね。
『嫌だ！行かないで！』って俺にしがみついてきたんだよ。」
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