【5.人見知りな剣士】 ページ14
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ーーその日の夜。
ふらりと部屋から抜け出したAは、門弟達が雑魚寝する大部屋へと静かに足を進める。昨夜はあれだけ迷っていたにも関わらず、あっさりと心は決まった。その決断を近藤に告げる前に、予め土方には伝えておくべきだと、そう思ったからである。
「あ、ちょうど良い所に」
タイミング良く障子が開き、のっそりと出て来たのは特徴的な橙色のアフロ頭。何人かいる近藤家の食客の一人である斎藤だ。最近では珍しい二刀流を扱い、神速の剣技を放つ彼のこともAは一目置いている。
だが、まだまだ新参者のAが慣れないのか、斎藤に度々話し掛けては、厠に逃げられるを繰り返しているのが、今の現状であった。
「斎藤、聞きたいことがあるんだが今いいか？」
「……っ！」
軽く手を上げながら、朗らかに問い掛ける。今まで男勝りな口調ゆえに、きつい言葉で他人を怖がらせてしまうことがあった。その欠点を克服し、今度こそ斎藤と普通に会話をしたい。Aは意識的に優しげな笑みを浮かべると、ジリと後退りする斎藤の足が止まった。
「……」
「あ、あのさ、土方見なかったか？話したいことがあって」
「…………」
「知らなかったら別にいいんだ。家のどこかには、きっといるだろうし」
「…………………」
どこまでも無言を貫く斎藤に、内心は悲鳴を上げていた。Aがもし近藤だったら。こんなにも会話に詰まる事も無かっただろうに。参ったように、人差し指で頬を掻く。そうして、たっぷり数秒間両者立ち尽くしたまま、気まずい沈黙が落ちた。話し掛けて直ぐ逃亡されなかっただけ、進歩しているのだろうか。ならば、斎藤が何か行動を起こすまで根気強く待つと決めた直後ーー早くに、その瞬間が訪れた。
斎藤は、突然自室に飛び込むようにして戻ると、白色のスケッチブックとペンを手に、Aの前に戻って来たのである。
「え、オマエ何やってーー」
目を丸くするAを置いてきぼりに、斎藤が白紙のページに黙々とペンを走らせる。そこで、ようやく気付いた。初めて、Aと筆談しようとしていることに。
「斎藤……っ」
Aは感激したように名前を呼んだ。心がほかほかと温まる。懐かなかった猫が懐いた瞬間とは、この事を言うのだろうか。そうして、文字を書き終えた斎藤が、スケッチブックを己の胸の前に掲げて、Aに見せる。
『土方さんなら、ミツバさんと総悟くんを家に送って行ったZ』
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☆辻村春樹☆(プロフ) - ハルさん» 初めまして！コメントありがとうございました。沖田姉弟の場面もこだわって書いている部分が多いので好きになって頂けて嬉しいです。総悟は出番少なかったので徐々に増やしていけたらいいなと思ってます！これからもよろしくお願いします。 (2022年1月6日 23時) (
レス) @page35 id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 初めまして。沖田が姉上とデェトと言うところが可愛すぎます……。あと文章がめちゃくちゃ好きです。とても引き込まれます。ミツバの印象のシーンなんてもう感動いたしました！これからも応援しています！ (2022年1月6日 22時) (レス) @page14 id: 2a42df9825 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - いくまさん» わ、嬉しい！ありがとうございます！！需要ないよな、と落ち込んでましたが、おかげでこれからも書き続けられます、更新頑張ります！！（嬉し泣きしそうです…） (2021年12月13日 18時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - 新作ドタイプです…陰ながら全力で応援させて頂きますね、、！更新頑張って下さい！ (2021年12月13日 17時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：☆辻村春樹☆ | 作成日時：2021年12月12日 20時
