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nb「じゃ、俺帰るわ‥‥。これ、ありがと」
おでこの大きな絆創膏を軽く指で叩いて立ち上がった翔太
dt「あ、うん‥‥」
もっと何か話す事が出来たはずなのに、ひとつも言葉に出来なくて
結局、翔太を玄関まで見送るまで一言も言葉を交わせなかった
nb「涼太、なんかごめんな‥‥。仕事、まだ残ってるだろ？」
dt「いや、仕込みは昼間に大体終わらせてるし、後は片付けだけだし」
nb「そっか‥‥。」
それだけ言うとプツリと会話は途切れた
何か話したい事があるのだろうか
翔太はなかなか帰ろうとしなかった
nb「そういや、また食えなかったな‥‥」
dt「え？」
nb「新作のデザート。俺が一番最初に食いたいって言ってたのにさ」
dt「あぁ、そう言えばそんな事言ってたね」
nb「もう、先に誰か食った？」
dt「あ、えっとぉ‥‥。色々あって、ラウールに‥‥」
そう言うと一瞬、翔太がムッとした表情を見せた
dt「あっ！でもソースがまだ未完成だったから市販のものを使って、だから未遂？的な‥‥」
nb「フォローしなくていいって、虚しくなるだろ」
なんて言ってる翔太だけど明らかに強がってる
ちょっと唇尖らせてるし‥‥
nb「だからまた来る」
dt「えっ？」
nb「店。また来るから、次は食わせて」
dt「あ、うん。わかった‥‥」
nb「く、食えても、また来るけどなっ！」
dt「えっ？」
nb「じゃあな！おやすみっ！」
そう言った翔太は勢いよく玄関のドアを開けると脱兎の如く飛び出して、バタバタと走り去って行ってしまった
それはもう、あっという間の出来事で、翔太が開け放った扉がゆっくりと閉まる頃には、翔太の走り去る足音は聞こえなくなってて
そんな彼の行動が『照れ』からくるものだったと理解するのに少しばかり時間を有した
けど、それを理解したら急に笑いが込み上げてきて、玄関で1人、腹を抱えてクスクスと笑っていた
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作者名：shiro | 作成日時：2022年4月29日 18時
