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「向井が、向井のほうから言い寄ってきたんです」
ずっと俯いてた顔を突然上げたかと思えば、彼は口を開いて
絞り出すように震える声で言った
「僕は教師と生徒やから恋人にはなれないと、はっきり伝えました」
俺は耳を疑った
確かに先生に会いたくて準備室に押しかけてたけど、言い寄ったつもりも、恋人になりたいなんて事も俺は言ってないのに
kj「せん‥‥せ?」
可愛いって言ってくれたんも、キスをしてくれたんも
全部先生からやったやん‥‥
kj「なん、で‥‥」
先生の言葉が信じられなくて、縋るように手を伸ばしたけど
俺の手は先生の腕を掴む事なく振り払われた
「本当の恋人になれないのなら、卒業前に思い出に一度だけ恋人みたいな事をして欲しいと懇願されました」
kj「嘘や‥‥そんなん俺言ってへんもん‥‥」
大好きだった人に、信じてた人に、俺は裏切られ
全ての元凶を俺に擦り付けようとする彼に、俺のショックは大きすぎて
もっと声を上げて否定してやりたかったのに、喉がぎゅっと絞られてまともに声も出なかった
次第に鼻の奥がツンとして頬を一筋の涙が流れていた
校長先生はそんな俺を眉間にシワを作って難しそうな顔で見ていた
そして、俺から隣に立つ彼に視線を移すと真一文字に閉じられていた口が開いて
「向井くんはもう帰りなさい。
後は大人たちで話をつけましょ」
そう言われて、担任の先生も少し躊躇いながらも俺の背中に手を添えると、応接室の扉の前まで誘導してくれた
kj「先生、俺‥‥」
「向井は何も心配せんでええ」
応接室から出され、扉が閉まる間際に声をかけると、担任は笑ってそう言った
そのぎこち無い笑顔が俺の不安感を煽ったけど、今の俺にはどうする事も出来んから、言われた通り帰宅することにした
やけど、翌日も昨日の事があって怖くて学校行けんようになって
そのまま俺は学校には行かず冬休みを迎えた
ほんで、冬休みが明けて気持ち的にも少し落ち着きを取り戻しつつあった俺は久しぶりに登校することにしたんやけど
その日の朝、彼が学校を退職したという報告を受けた
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作者名:shiro | 作成日時:2022年4月29日 18時