モテモテ…? ページ8
「…えっと、聞くけど。Aは何が見えてんの?」
若干頬をひきつらせた兄ちゃんが聞く。
『…多分幽霊?』
「それ笑顔で言うことじゃないよね!?…でもさすが、事故物件……。」
ぎゅっと兄ちゃんの腕に力が入った。
視界の端に黒い床のシミが入る。
知らない誰かの死をそこに感じてしまって、見ることが出来なかった。
【…この部屋、事故物件なのにリフォームとかしてないんだね。】
シミもそのままだし。…リフォームしても消えないのかもしれないけど。
「ちょっと、何してるの。」
千さんが近づいて来て、思い出したように兄ちゃんが私を床に降ろす。
と思えば千さんに抱っこされる。
「何してたの?」
「はわわ…Aを抱っこしてるユキ…!超カッコイイ!!ユキの腕の中ですまし顔のAも超カワイイ!!」
「A軽いね。これからは味気の無い病院食じゃなくてもっと美味しいもの僕が作るから。もっと体力も筋力もつけなきゃね。」
口に手を当てて頬を染めてる兄ちゃん。
至近距離に千さんの顔がある。
すごく整った顔。
最近はストーカーに会うことも多くなったって兄ちゃんが言ってた。
アイドルって大変なんだな…。
淡い水色の瞳にきょとんとした顔の私が映っている。
…あ、そういえば、
『千さんは髪の毛伸ばしてるの?』
さらさらな髪の毛に手を伸ばしてちょっとだけ触った。
初めて見た時よりもだいぶ長くなっている。
「あぁ、うん。どう?」
『うん、カッコいい!』
笑って言うと「そう?」と微笑んだ。
その時ゾッと悪寒がした。
視線を感じて隣を見ると、さっきまで部屋の奥でこちらを見ていただけの女の人が私を睨みつけている。
『っ!』
突然向けられた悪意に全身が強張る。
その悪意が何なのか、どうして私に向けられたのか考える。
…もしかして。
『千さん、ちょっと降ろして?』
「うん?」
首を傾げつつもそっと床に降ろしてくれる。
そのまま千さんから少し離れると嫌な気配も少しばかり和らぐ。
…やっぱり、そっか。
「…ぁ、嫌だった?」
突然無言で離れられて、若干不安そうな表情になってる千さん。
『…え?ううん、嫌じゃないよ?』
否定すると、ホッとした表情になる千さん。
「どうしたの?…あ、もしかして、さっき言ってた幽霊?」
「幽霊?」
兄ちゃんの言葉に頷くと、首をかしげる千さん。
『女の人がいてね、千さんのことが好きみたい。抱っこされてた時、睨まれたから。』
「ああ、それで…。」
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欅夏希 - とっても面白いです!感情の変化や状況などが分かりやすく、読みやすいなぁと個人的には思っています!お話を作るのは簡単ではないかもしれませんが、続きを読めるのを楽しみに待たせて頂きます。無理なさらず、頑張って下さい。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: 94cd216a66 (このIDを非表示/違反報告)
柚木夏紗 - 面白いっ!!!!更新待ってます!!! (2020年3月18日 7時) (レス) id: 73f9f96d98 (このIDを非表示/違反報告)
聖(プロフ) - はじめまして いつも更新を楽しみにしています。 これからも頑張ってください^_^ (2020年3月14日 12時) (レス) id: d507af1541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:テル | 作成日時:2020年3月3日 13時